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一頻
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ひとしき
ふりがな文庫
“
一頻
(
ひとしき
)” の例文
岩野泡鳴氏は文士や
画家
(
ゑかき
)
が
片手間
(
かたでま
)
の生産
事業
(
じごふ
)
としては養蜂ほど
好
(
よ
)
いものは無いといつて、
一頻
(
ひとしき
)
りせつせと蜜蜂の世話を焼いてゐた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
また私の
胸
(
むね
)
に
和
(
やはら
)
ぎの芽を
植
(
う
)
ゑそめたものは、
一頻
(
ひとしき
)
り私の
膓
(
はらわた
)
を
噛
(
か
)
み
刻
(
きざ
)
んでゐたところの
苦惱
(
くなう
)
が
生
(
う
)
んだ、ある
犧牲的
(
ぎせいてき
)
な心でした。
冬を迎へようとして
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
羽柴筑前守、前田又左衛門、福富平左衛門、
佐々内蔵介
(
さっさくらのすけ
)
——それらの若い部将の隊伍の力づよい足なみも
一頻
(
ひとしき
)
りつづいた。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
美女達はその手を取って
洞
(
ほらあな
)
の中へ入ったが、歓び笑う声が
一頻
(
ひとしき
)
り聞えてきた。紇は巌の陰で合図のあるのを待っていた。と、美女の一人が出てきて
美女を盗む鬼神
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
花車重吉を頼んで
何処
(
どこ
)
までも討たんければならぬと云って、
一頻
(
ひとしき
)
り私を狙って居るという事を
慥
(
たしか
)
に人を
以
(
もっ
)
て聞いたそう云う手前が心で居たものが、
又
(
ま
)
た
此処
(
こゝ
)
に来て
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
突然硝子を射抜くやうな太く真つ直な雨脚がヂヂヂヂヂイーと
一頻
(
ひとしき
)
り窓に噛みつくのであつた。
竹藪の家
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
妻は入院の費用にあてるため、郷里に置いてある
箪笥
(
たんす
)
を本家で買いとってもらうことを相談した。彼がさびしく同意すると、妻は寝たままで、
一頻
(
ひとしき
)
り彼の無能を云うのであった。
秋日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
また
一頻
(
ひとしき
)
り黙った
刻
(
とき
)
がつづいたが、町にはいるには惜しいくらいの愉しさを、きゅうに言葉でそれを表わさなければならぬものが感じられた。おなじ思いは筒井の心にもあった。
津の国人
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
而
(
そ
)
して又
一頻
(
ひとしき
)
り、異ふ意味での談話が盛つた。が、それでも二時近くなると、芸者たちもぽつ/\帰つて行き、割合に近くに
住居
(
すまひ
)
のあるS君とY君とも、自動車を呼んで、帰る事になつた。
良友悪友
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
美奈子が、玄関から上って、奥の離れへ行こうとして客間の前を通ったとき、
一頻
(
ひとしき
)
り
賑
(
にぎや
)
かな笑い声が、美奈子の耳を
衝
(
つ
)
いて起った。今までは、そうした笑い声が、美奈子の心を
擦
(
かす
)
りもしなかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
時々空が暗くなって雲が濃くなると
一頻
(
ひとしき
)
りずつ必ず雨を降らせる。
大雨の前日
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
その年も暖冬で、地上に雪はなかったが、時時、大きな牡丹雪が、
一頻
(
ひとしき
)
り降り続く。やがて前方に、意外にも広大なスロープを持った、蔵王山麓の風景が展けて来る。貞子はその一点を指さして言う。
澪標
(新字新仮名)
/
外村繁
(著)
昨夜
(
ゆうべ
)
は
一頻
(
ひとしき
)
り雨が降っていましたが、この辺にも
烈
(
はげ
)
しい夕立ちがあったのでしょうか? 空が曇って、低く雲が垂れて、しかもその曇った雲の切れ目から薄日が
洩
(
も
)
れて、一際濃い
彼方
(
かなた
)
の山の中腹から
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
トーマス・リイドといへば、米国では
一頻
(
ひとしき
)
り鳴らした弁護士出の政治家で、共和党の弁士として議院で随分雄弁を
揮
(
ふる
)
つたものだ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
又右衛門の家の門辺には、待ちもうけていた縁者や家族たちが、藤吉郎のすがたを迎えて、
一頻
(
ひとしき
)
り揺れる明りに華やいだ。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
便所
(
はばかり
)
の手拭ひ掛けがこと/\と、戸袋に当つて搖れるのがやむと、
一頻
(
ひとしき
)
りひつそりと静かになつて、弱り切つた虫の音が、
歯※
(
はぐき
)
にしみるやうに啼いてるのが耳だつて来る。
散歩
(新字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
その翌日は夕方から暴風雨になって
一頻
(
ひとしき
)
り荒れたが十時過ぎになってぱったり
止
(
や
)
んだ。秀夫は
寝床
(
ねどこ
)
の中へ入っていたが、天気が静まるとぶらりと
戸外
(
そと
)
へ出て、往くともなしに新京橋の方へ往った。
牡蠣船
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
風に
煽
(
あお
)
られた大雨が
一頻
(
ひとしき
)
り
沛然
(
はいぜん
)
として降り注いで来た。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
女流声楽家三浦
環
(
たまき
)
と今は故人の千葉
秀浦
(
しうほ
)
との関係は
一頻
(
ひとしき
)
り
喧
(
やかま
)
しい
取沙汰
(
とりさた
)
になつたので、世間には今だにそれを覚えてゐる人も
鮮
(
すくな
)
くあるまい。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
この下の谷間から石を切り出しているので、そこで働いている
石切
(
いしきり
)
職人たちが、毎日の例によって
八刻
(
やつ
)
というと、ここへ甘い物をたべに来て、
一頻
(
ひとしき
)
り番茶を飲みながら
饒舌
(
じょうぜつ
)
を
娯
(
たの
)
しむ。
宮本武蔵:05 風の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芸妓連が
一頻
(
ひとしき
)
り雀のやうにぺちやくつて、さつと引き揚げて
往
(
ゆ
)
くと、
後
(
あと
)
に残つた一人の相客は溜息を
吐
(
つ
)
きながら言つた。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
と、
一頻
(
ひとしき
)
りに、
堂上
(
どうじょう
)
間の笑いばなしになったという。
新書太閤記:03 第三分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
多分
一頻
(
ひとしき
)
り噂のあつた岩野清子女史との結婚問題を気にして、それで一寸
拗
(
す
)
ね出したものらしい。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
呟いて、
一頻
(
ひとしき
)
り
咳込
(
せきこ
)
む。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
一頻
(
ひとしき
)
り
喋舌
(
しやべ
)
り疲れた
連中
(
れんぢゆう
)
がどしんと一つ
卓子
(
テーブル
)
を叩いて
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
一
常用漢字
小1
部首:⼀
1画
頻
常用漢字
中学
部首:⾴
17画
“一”で始まる語句
一
一人
一寸
一言
一時
一昨日
一日
一度
一所
一瞥