一体いつたい)” の例文
旧字:一體
……一体いつたいが、天上界てんじやうかい遊山船ゆさんぶねなぞらへて、丹精たんせいめました細工さいくにござるで、御斉眉おかしづきなかから天人てんにんのやうな上﨟じやうらう御一方おひとかた、とのぞんだげな。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梧桐あをぎり芭蕉ばせう、柳など詩や句に揺落えうらくを歌はるるものは、みな思ひのほか散る事遅し。一体いつたい百日紅と云ふ木、春も新緑の色あまねき頃にならば、容易に赤い芽を吹かず。
雑筆 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
うはいかない、一体いつたいに火がかゝるんだから。金「頭と足のほうはホンガリいてはら生焼なまやきにはなりますまいか。坊「うはいきませぬよ、元膩もとあぶらだから一体いつたいに火がかゝるでな。 ...
黄金餅 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
一体いつたい東のお奉行所づきのものの書付かきつけなら、なぜそれを西のお奉行所へ持つて来たのだい。」
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
「先生は一体いつたいなにる気なんだらうね。小母おばさん」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
耶路撒冷イエルサレムつて、一体いつたいなんだい。
一体いつたい東海道とうかいだう掛川かけがは宿しゆくからおなじ汽車きしやんだとおぼえてる、腰掛こしかけすみかうべれて、死灰しくわいごとひかへたから別段べつだんにもまらなかつた。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
この位で御免ごめんかうむりますが、西洋の幽霊は一体いつたいに、骸骨がいこつでなければ着物を着てゐる。裸の幽霊と云ふのは、近頃になつても一つも類がないやうです。もつとも怪物には裸も少くない。
近頃の幽霊 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
一体いつたい今日けふは何をしかられたんです」
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
はてな、内儀ないぎかへさぬか、一体いつたいどんな魔物まものむぞ。——其処そこくまでにはなにいたものはかつたにつて——うへか、と最一もうひと五階ごかいのぼつてた。様子やうすれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
だんうへで、一体いつたい石地蔵いしぢざうつた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)