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そのざ
唯亂暴一
途に
品川へも
足は
向くれど
騷ぎは
其座限り、
夜中に
車を
飛ばして
車町の
破落戸がもとをたゝき
起し、それ
酒かへ
肴と、
紙入れの
底をはたきて
無理を
徹すが
道樂なりけり
負せられては
最早了簡ならず今一度言て見よ己れ
其座は立せじと
刀追取膝立直し
怒の
目眥り
釣上て
發打と
白眼付けれ共久兵衞は少しも驚く氣色なく
否盜人に
相違なし百兩盜みし
大盜賊と大聲
揚て
鳴わめけば爰に至りて文右衞門は
耐忍兼一
刀すらりと
拔放し只一
打と
振上るに久兵衞は
父さま
無二の
御懇意とて
恥かしき
手前に
薄茶一
服參らせ
初しが
中々の
物思ひにて
帛紗さばきの
靜こゝろなく
成りぬるなり
扨もお
姿に
似ぬ
物がたき
御氣象とや
今の
代の
若者に
珍らしとて
父樣のお
褒め
遊ばす
毎に
我ことならねど
面て
赤みて
其坐にも
得堪ねど
慕はしさの
數は
増りぬ
左りながら
和女にすら
云ふは
始めて
云はぬ
心は