“驅(か)” の例文
新字:駆
船長(せんちやう)も一等運轉手(チーフメート)も度(ど)を失(うしな)つて、船橋(せんけう)を驅(か)け上(あが)り、驅(か)け降(くだ)り、後甲板(こうかんぱん)に馳(は)せ、前甲板(ぜんかんぱん)に跳(おど)り狂(くる)ふて、聲(こゑ)を限(かぎ)りに絶叫(ぜつけう)した。水夫(すゐふ)。
胸中の苦悶は我を驅(か)りて、狹きヱネチアの巷(こうぢ)を、縱横に走り過ぎしめしに、ふと立ち留りて頭を擡(もた)ぐれば、われは又前(さき)の劇場の前に在り。
驟雨(しうう)は後(あと)から後(あと)からと驅(か)つて來(く)るので曉(あかつき)の白(しら)まぬうちから麥(むぎ)を搗(つ)いて庭(には)一杯(ぱい)に筵(むしろ)を干(ほし)た百姓(ひやくしやう)をどうかすると五月蠅(うるさ)く苛(いぢ)めた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
その騷ぎに驚いて驅(か)けつけた近所の人達も、灯(あかり)が無くてはどうすることも出來ず、船頭の爲五郎が水の中に飛び込んで、船の下に吸ひ込まれて
「成(な)りたけ向(むか)うからはずみをつけて驅(か)けて來(き)てポンと打(ぶ)つかりたまへ、可(い)いか。」すとんと、呼吸(こきふ)で、手(て)もなく投(なげ)られる。
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
(暑(あつ)い日(ひ)で直(すぐ)に眠(ねむ)くなつたり、懵然(ぼんやり)するものだから一心(しん)に)心(こゝろ)の中(うち)で考(かんが)へてゐますと、突然(とつぜん)可愛(かあい)い眼(め)をした白兎(しろうさぎ)が、その傍(そば)に驅(か)け寄(よ)つて來(き)ました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
此纎弱(このかよわ)き娘(むすめ)一人(ひとり)とり止(と)むる事(こと)かなはで、勢(いきほ)ひに乘(の)りて驅(か)け出(いだ)す時(とき)には大(だい)の男(をとこ)二人(ふたり)がゝりにてもむつかしき時(とき)のありける。
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
と、お互(たがひ)に微醺(びくん)を帶(お)びて變(へん)に彈(はづ)み立(た)つた氣分(きぶん)で黄包車(ワンポイソオ)を驅(か)り、再(ふたゝ)び四馬路(スマロ)の大通(おほどほり)へ出(で)たのはもう夜(よる)の一時(じ)過(す)ぎだつた。
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
心(こゝろ)は不覺(そゞろ)、氣(き)は動顛(どうてん)して、匇卒(いきなり)、室(へや)を飛出(とびだ)したが、帽(ばう)も被(かぶ)らず、フロツクコートも着(き)ずに、恐怖(おそれ)に驅(か)られたまゝ、大通(おほどほり)を眞(ま)一文字(もんじ)に走(はし)るのであつた。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
よろこんだの、よろこばないのつて、のんべえ は轉(ころげ)るやうに、よろこんでその山(やま)から家(いへ)に驅(か)け戻(もど)りました。來(き)てみると嬶(かゝあ)も子(こ)どもも誰(だれ)もゐません。
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
けれども彼(かれ)の淋(さび)しみは、彼(かれ)を思(おも)ひ切(き)つた極端(きよくたん)に驅(か)り去(さ)る程(ほど)に、強烈(きやうれつ)の程度(ていど)なものでないから、彼(かれ)が其所(そこ)迄(まで)猛進(まうしん)する前(まへ)に、それも馬鹿々々(ばか/\)しくなつて已(や)めて仕舞(しま)ふ。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
二人(ふたり)は同時(どうじ)に閭(りよ)を一目(ひとめ)見(み)た。それから二人(ふたり)で顏(かほ)を見合(みあは)せて腹(はら)の底(そこ)から籠(こ)み上(あ)げて來(く)るやうな笑聲(わらひごゑ)を出(だ)したかと思(おも)ふと、一しよに立(た)ち上(あ)がつて、厨(くりや)を驅(か)け出(だ)して逃(に)げた。
寒山拾得 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
其時(そのとき)村(むら)の内(うち)に一人(ひとり)の老人(としより)がありまして、其塲(そのば)に驅(か)け付(つ)けて參(まい)り、錢(おあし)を呑(の)んだと云(い)ふ話(はなし)を聞(きい)たが就(つい)ては、私(わたくし)が實驗(じつけん)があるから、其(そ)れをば何卒(どうぞ)行(や)ツて見(み)て呉(く)れ、其法(そのはう)と申(まう)すは
吹上停車場より腕車を舘林に驅(か)ることゝはなしぬ、タマに出る子は風に逢ふとかや、我が指して行く日光、足尾の雪山颪は土沙を捲きて壯丁二個も挽きぞワズろふばかりなり
佐野だより (旧字旧仮名) / 木下尚江(著)
ヂュリ 驅(か)けよ速(はや)う、火(ひ)の脚(あし)の若駒(わかごま)よ、日(ひ)の神(かみ)の宿(やど)ります今宵(こよひ)の宿(やど)へ。フェートンのやうな御者(ぎょしゃ)がゐたなら、西(にし)へ/\と鞭(むち)をあてゝ、すぐにも夜(よる)を將(つ)れて來(こ)うもの、曇(くも)った夜(よる)を。
雪(ゆき)に覆(おほ)はれたその切(き)り崩(くづ)しの斜面(しやめん)に、獸(けもの)の足跡(あしあと)が、二筋(ふたすぢ)についてゐるのは、犬(いぬ)か何(なに)かゞ驅(か)け下(お)りたのであらう、それとも、雪崩(なだれ)になつて轉(ころ)げ下(お)りて來(き)た塊(かたま)りの走(はし)つた跡(あと)でもあらうかと
日の光を浴びて (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
馭者(ぎよしや)は、休みなく馬を驅(か)つた。さうして一時間半が、私には殆んど二時間位にのびたやうな氣がした。やつと彼はその席から振り返つて云つた。「もうソーンフィールドは大して遠くねえです。」
ああ、海峽(かいけふ)の濱邊(はまべ)から驅(か)けつけた雲のおかげで
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
雲(くも)を驅(か)け行(ゆ)く天(てん)の馬(うま)
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
他(た)の村落(むら)の人々(ひと/″\)が聞(き)き傳(つた)へて田圃(たんぼ)や林(はやし)を越(こ)えて、其(そ)の間(あひだ)に各自(かくじ)の體力(たいりよく)を消耗(せうまう)しつゝ驅(か)けつけるまでには大(おほ)きな棟(むね)は熱火(ねつくわ)を四方(はう)に煽(あふ)つて落(お)ちた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
輕(かろ)き服裝(ふくさう)せる船丁等(ボーイら)は宙(ちう)になつて驅(か)けめぐり、逞(たく)ましき骨格(こつかく)せる夥多(あまた)の船員等(せんゐんら)は自己(おの)が持塲(もちば)/\に列(れつ)を作(つく)りて、後部(こうぶ)の舷梯(げんてい)は既(すで)に引揚(ひきあ)げられたり。
師走(しはす)の算段(さんだん)に驅(か)け𢌞(まは)つて五味坂(ごみざか)で投出(なげだ)された、此(こ)の時(とき)は、懷中(くわいちう)げつそりと寒(さむ)うして、心(しん)、虚(きよ)なるが故(ゆゑ)に、路端(みちばた)の石(いし)に打撞(ぶつ)かつて足(あし)の指(ゆび)に怪我(けが)をした。
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
此方(こなた)は言葉(ことば)もなく袖(そで)を捉(とら)へて驅(か)け出(だ)せば、息(いき)がはづむ、胸(むね)が痛(いた)い、そんなに急(いそ)ぐならば此方(こち)は知(し)らぬ、お前(まへ)一人(ひとり)でお出(いで)と怒(おこ)られて、別(わか)れ別(わか)れの到着(とうちやく)
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
お越は咄嗟(とつさ)の間に石垣を驅(か)け降りて、其處に繋(つな)いだ小舟に飛乘り、棹(さを)を突つ立てて、浮きつ沈みつする子供に近づき、危ふいところで引上げました。
けれど何程(なにほど)のことがあらうと運命(うんめい)を天(てん)にゆだね、夢中(むちう)になつて驅(か)けだしました。それからのことは一切(さい)わかりません
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
鼠捕(ねずみと)りの名人(めいじん)だわ!あァ然(さ)うだ、鳥(とり)を追(お)ッ驅(か)ける所(ところ)を見(み)せてあげたいのね!それこそ玉(たま)ちやんは其(そ)れを見(み)るが早(はや)いか、直(す)ぐに小鳥(ことり)などは捕(と)つて食(た)べて了(しま)つてよ!
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
君はこよひの舞臺にて、むかし羅馬の通衢(ちまた)を驅(か)るに凱旋の車をもてせしアヌンチヤタがいかに賤客に嘲(あざけ)られ、口笛吹きて叱責せられたるかを見そなはし給ひしなるべし。
其夜(そのよ)は慙恨(ざんこん)の情(じやう)に驅(か)られて、一睡(すゐ)だも爲(せ)ず、翌朝(よくてう)遂(つひ)に意(い)を决(けつ)して、局長(きよくちやう)の所(ところ)へと詑(わび)に出掛(でかけ)る。
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
圓明寺(ゑんみやうじ)の杉(すぎ)が焦(こ)げた樣(やう)に赭黒(あかぐろ)くなつた。天氣(てんき)の好(い)い日(ひ)には、風(かぜ)に洗(あら)はれた空(そら)の端(は)ずれに、白(しろ)い筋(すぢ)の嶮(けは)しく見(み)える山(やま)が出(で)た。年(とし)は宗助(そうすけ)夫婦(ふうふ)を驅(か)つて日毎(ひごと)に寒(さむ)い方(はう)へ吹(ふ)き寄(よ)せた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
これといつて何(なに)一(ひと)つ取りとめたお話(はなし)もいたしませんでしたのねえ、狹(せま)い私の家中(うちぢう)を驅(か)け廻(まは)つてゐるまあちやんとせつちやんの遊(あそ)びは、二人(ふたり)のやりかけた話をたび/\さらつて行(ゆ)きました、私はたゞ
冬を迎へようとして (旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
生(いき)の力に驅(か)られたり
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
西(にし)の方(かた)廣野(ひろの)を驅(か)らん
孔雀船 (旧字旧仮名) / 伊良子清白(著)
乾燥(かんさう)して居(ゐ)る粉(こな)の爲(ため)に咽(む)せて女房等(にようばうら)は頻(しき)りに咳(せき)をした。彼等(かれら)は驅(か)けおりて手桶(てをけ)の水(みづ)をがぶりと飮(の)んで漸(やうや)く胸(むね)を落附(おちつ)けた。
土 (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
伯母(をば)さんあの太夫(たゆう)さん呼(よ)んで來(き)ませうとて、はたはた驅(か)けよつて袂(たもと)にすがり、投(な)げ入(い)れし一品(しな)を誰(た)れにも笑(わら)つて告(つ)げざりしが好(この)みの明烏(あけがらす)さらりと謠(うた)はせて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「手段は二つしかない。瀧五郎親分は、氣の毒だが下つ引を五六人驅(か)り出して、目黒の石松と、大久保のお勘婆アと、板橋の千之助を當つて見てはくれまいか」
「柳(りう)ちやん、來(き)たよ!」といふが疾(はや)いか、横(よこ)ざまに驅(か)けて入(い)る、柳腰(やなぎごし)、下駄(げた)が脱(ぬ)げて、足(あし)の裏(うら)が美(うつく)しい。
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
何時(いつ)でも第(だい)一に其(その)運動塲(うんどうじやう)に驅(か)けて行(ゆ)くのは彼(かれ)だ、其(その)身體(しんたい)の敏捷(びんしやう)に動(うご)く事(こと)とどんな痛(いた)い目(め)にも痛(いた)い顏(かほ)をせぬ事(こと)と、それから極(ご)く記臆力(きおくりよく)が強(つよ)く、規則(ルール)などは直(す)ぐ覺(おぼ)えてしまうので
彼(かれ)は坂井(さかゐ)の家(いへ)に、たゞ苟(いやし)くも免(まぬ)かれんとする料簡(れうけん)で行(い)つた。さうして、其(その)目的(もくてき)を達(たつ)するために、耻(はぢ)と不愉快(ふゆくわい)を忍(しの)んで、好意(かうい)と眞率(しんそつ)の氣(き)に充(み)ちた主人(しゆじん)に對(たい)して、政略的(せいりやくてき)に談話(だんわ)を驅(か)つた。
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
胸(乳房)ゆたかなる羅馬の女子は、燿(かゞや)く眼にこの樣を見下して、車を驅(か)れり。我もドメニカに引かれて、恩人のけふの祝に、蔭ながら與(あづか)らばやと、カムパニアを立出で、別墅の苑(その)の外に來ぬ。
突然(とつぜん)一人(ひとり)の歩兵(ほへい)が制服(せいふく)を着(つ)けて森(もり)の中(なか)から驅(か)け出(だ)して來(き)ました——
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「かあちやん、あれは何(なに)。あのぶうぶうつて驅(か)けて來(く)るのは」
ちるちる・みちる (旧字旧仮名) / 山村暮鳥(著)
降(ふ)る雨(あめ)を厭(いと)はず驅(か)け出(いだ)さんとせしが、あゝ彼奴(あいつ)だと一ト言(こと)、振(ふり)かへつて、美登利(みどり)さん呼(よ)んだつても來(き)はしないよ、一件(けん)だもの、と自分(じぶん)の頭(つむり)を丸(まる)めて見(み)せぬ。
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
... がらん/\と驅(か)けて行(ゆ)くのは、號外(がうぐわい)ではなささうだが、何(なん)だい。」婆(ばあ)さんが「あれは、ナアモ、藝妓衆(げいこしゆ)の線香(せんかう)の知(し)らせでナアモ。」そろ/\風俗(ふうぞく)を視察(しさつ)におよんで
火の用心の事 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
ハツと思つて驅(か)け拔けると、そいつが又執念(しふねん)深く追つかけて來るぢやありませんか。
老(おい)たる人(ひと)はよろ/\たよ/\と二人(ふたり)ながら力(ちから)なさゝうの風情(ふぜい)、娘(むすめ)が病(やま)ひの俄(には)かに起(おこ)りて私(わたし)はもう歸(かへ)りませぬとて驅(か)け出(いだ)すを見(み)る折(をり)にも、あれあれ何(ど)うかして呉(く)れ
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼處(かしこ)に、遙(はるか)に、湖(みづうみ)の只中(たゞなか)なる一點(いつてん)のモーターは、日(ひ)の光(ひかり)に、たゞ青瑪瑙(あをめなう)の瓜(うり)の泛(うか)べる風情(ふぜい)がある。また、行(ゆ)く船(ふね)の、さながら白銀(しろがね)の猪(しゝ)の驅(か)けるが如(ごと)く見(み)えたるも道理(ことわり)よ。
十和田の夏霧 (旧字旧仮名) / 泉鏡花、泉鏡太郎(著)
そんな事を言ひ乍らも、八五郎はお品と一緒に石原町まで驅(か)け付けてゐたのです。
あれ三ちやんで有(あ)つたか、さても好(よ)い處(ところ)でと伴(とも)なはれて行(ゆ)くに、酒(さか)やと芋(いも)やの奧深(おくふか)く、溝板(どぶいた)がた/\と薄(うす)くらき裏(うら)に入(い)れば、三之(の)助(すけ)は先(さき)へ驅(か)けて、父(とゝ)さん、母(かゝ)さん
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
船蟲(ふなむし)が群(むら)がつて往來(わうらい)を驅(か)けまはるのも、工場(こうぢやう)の煙突(えんとつ)の烟(けむり)が遙(はる)かに見(み)えるのも、洲崎(すさき)へ通(かよ)ふ車(くるま)の音(おと)がかたまつて響(ひゞ)くのも、二日(ふつか)おき三日(みつか)置(お)きに思出(おもひだ)したやうに巡査(じゆんさ)が入(はひ)るのも
三尺角 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
平次は飛鳥(ひてう)の如く驅(か)け拔けて、二人の前へ立ち塞(ふさ)がりました。