“棹”のいろいろな読み方と例文
読み方割合
さお71.3%
さを18.8%
さをさ3.6%
さほ1.3%
ざお1.3%
ざを1.3%
さおさ0.9%
0.4%
みざお0.4%
0.4%
(注) 作品の中でふりがなが振られた語句のみを対象としているため、一般的な用法や使用頻度とは異なる場合があります。
……お前さんに漕げるかい、と覚束おぼつかなさに念を押すと、浅くてさおが届くのだから仔細ない。ただ、一ヶ所そこの知れない深水ふかみずの穴がある。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
今にして思へば政海の波浪はおのづから高く自からひくく、虚名を貪り俗情にはるゝの人にはさをつかひ、かいを用ゆるのおもしろみあるべきも
三日幻境 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
良佐は茶山への附合に、舟を同じうして佐屋川にさをさした。「数派春流一短篷。喜君迂路此相同。」かみに云つたとほり、訣別したのは四日市である。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
茄子なすび大根だいこの御用をもつとめける、薄元手を折かへすなれば、折からの安うてかさのある物よりほかさほなき舟に乗合の胡瓜きうりつと松茸まつたけの初物などは持たで
大つごもり (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
見れば前髪の若者自身が、水馴みなざおを取って、頻りと止める船頭や客を尻目に、ぐいぐいと棹の水を切ってこなたの岸へ船を突き進めて来るのであった。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
見ると兩國橋の、東西兩方の橋詰から、一杯に灯を積んだ船が二艘、この邊の中心點を目がけて、長ざをで橋の下を叩きながら、靜かに、靜かに進んで來るのです。
と言いかけてと小さなといき、人質のかのステッキを、斜めに両手で膝へ取った。なさけの海にさおさす姿。思わず腕組をしてじっと見る。
春昼後刻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
風のさき黄なるカンナの群落ぐんらくに舟しかへす今はまぶしみ
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
河舟かわぶねの小さなのが岸につないであった。豊吉はこれに飛び乗るや、ともづなを解いて、みざおを立てた。昔の河遊びの手練しゅれんがまだのこっていて、船はするすると河心かしんに出た。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
小平太は苦しそうに、ただ「いいや」とばかり頭振かぶりをってみせた。
四十八人目 (新字新仮名) / 森田草平(著)