“顧(かへ)” の例文
長い一生を振(ふ)り顧(かへ)つてみても、何一つ碌な事は仕出来(しでか)してゐないので、この頃では他(ひと)と話す時には、いつもパアシング将軍の舅を自慢する事に決めてゐる。
余は通り過ぎて振り顧(かへ)り、暫し停立(たゝず)んで居ると、突然間近なる一軒の障子が開(あ)いて一人の男がつと現はれた。
空知川の岸辺 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
幾度(いくた)びか顧(かへ)りみて思(おも)へば、さてもはした無(な)きことなり、氏(うぢ)も知(し)らず素性(すじやう)も知(し)らず、心情(こゝろだて)も何(なに)も知(し)れぬ人(ひと)に戀(こ)ふとは、我(わ)れながら淺(あさ)ましきことなり、定(さだめ)なき世(よ)に定(さだ)めなき人(ひと)を頼(たの)む
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
月(つき)が改(あらたま)つて、役所(やくしよ)の動搖(どうえう)も是(これ)で一段落(いちだんらく)だと沙汰(さた)せられた時(とき)、宗助(そうすけ)は生(い)き殘(のこ)つた自分(じぶん)の運命(うんめい)を顧(かへ)りみて、當然(たうぜん)の樣(やう)にも思(おも)つた。又(また)偶然(ぐうぜん)の樣(やう)にも思(おも)つた。立(た)ちながら、御米(およね)を見下(みおろ)して
門 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
かゝりけれども猶(な)ほ一片(ぺん)誠忠(せいちう)の心(こゝろ)は雲(くも)ともならず霞(かすみ)とも消(き)えず、流石(さすが)に顧(かへ)りみるその折々(をり/\)は、慚愧(ざんぎ)の汗(あせ)背(そびら)に流(なが)れて後悔(かうくわい)の念(ねん)胸(むね)を刺(さし)つゝ、是(こ)は魔神(ましん)にや見入(みい)れられけん、有(あ)るまじき心(こゝろ)なり
たま襻 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)