頬被ほゝかぶり)” の例文
此處こゝ筒袖つゝそで片手かたてゆつたりとふところに、左手ゆんで山牛蒡やまごばうひつさげて、頬被ほゝかぶりしたる六十ばかりの親仁おやぢ、ぶらりと來懸きかゝるにみちふことよろしくあり。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
半「ちげえねえ、そう/\彼処あすこどぶか何かで水でも流れる所と思って居た、おや足音が聞えるぜ、さア/\頬被ほゝかぶりをしねえ、頭が出るといけねえから」
すぐまへなるはしうへに、頬被ほゝかぶりした山家やまが年増としまが、つとひらいて、一人ひとりひとのあとをとほつた、わたしんで、げて、「おほき自然薯じねんじようておくれなはらんかいなア。」
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
斯う庭のおも見詰みつめますと、生垣の外に頬被ほゝかぶりをした男がたゝずんでる様子、能々よく/\透かして見ますると、飽かぬ別れをいたしたる恋人、伊之助いのすけさんではないかと思ったから、高褄たかづまをとって庭下駄を履き
奥に三味さみの聞ゆるたぐひにあらざるをもつて、頬被ほゝかぶり懐手ふところで、湯上りの肩に置手拭おきてぬぐひなどの如何いかゞはしき姿を認めず、華主とくいまはりの豆府屋、八百屋、魚屋、油屋の出入しゆつにふするのみ。
草あやめ (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ところへ、荷車にぐるまが一だい前方むかうから押寄おしよせるがごとくにうごいて、たのは頬被ほゝかぶりをした百姓ひやくしやうである。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
このくらゐのあめは、たけがさおよぶものかと、半纏はんてんばかりの頬被ほゝかぶりで、釣棹つりざをを、いてしよ、とこしにきめた村男むらをとこが、山笹やまざさ七八尾しちはつぴき銀色ぎんいろ岩魚いはなとほしたのを、得意顏したりがほにぶらげつゝ
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)