雪中せつちゆう)” の例文
「十二日。晴。」一戸の記に拠れば、武揚等の雪中せつちゆう江刺えざしに入つた日である。松前の陥いつた時、藩主松前徳広のりひろは江刺にゐて、敵兵の至る前に熊石に逃れた。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
鳥獣とりけだもの雪中せつちゆうしよくなきをしりて雪あさき国へるもあれど一ぢやうならず。雪中にこもて朝夕をなすものは人と熊と也。
贔負目ひいきめには雪中せつちゆううめ春待はるまつまの身過みす世過よす小節せうせつかゝはらぬが大勇だいゆうなり辻待つじまちいとま原書げんしよひもといてさうなものと色眼鏡いろめがねかけて世上せじやうものうつるは自己おのれ眼鏡めがねがらなり
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
その娘が、今年は、雪中せつちゆうを出あるく時の用意にとて、縞セルの被布ひふを拵らへた。
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
中硝子なかがらす障子しやうじごしに中庭なかにはまつ姿すがたをかしと絹布けんぷ四布蒲團よのぶとんすつぽりと炬燵こたつうちあたゝかに、美人びじんしやく舌鼓したつゞみうつゝなく、かどはしたるひろひあれは何處いづこ小僧こそうどん雪中せつちゆうひと景物けいぶつおもしろし
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
越年中をつねんちゆうは、讀書するか、喰ふか、飮むか、寢るかぢや。子供の出來るのは名物ぢやぞ」と、また女どもの笑ひを引いてから、「面白いのは雪中せつちゆうの戀——戀と云へば、奇麗過ぎて當らないか知らんが、 ...
泡鳴五部作:05 憑き物 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
○ 雪中せつちゆう葬式さうしき
○ 雪中せつちゆう葬式さうしき
さききてもるかきかれませねばなににてもよしくるまたのみなされてよとにはか足元あしもとおもげになりぬあの此樣こんくるまにおしなさるとかあの此樣こんくるまにと二度にど三度さんどたかかろ點頭うなづきてことばなしれも雪中せつちゆう隨行ずゐかう難儀なんぎをりとてもとむるまゝに言附いひつくるくだんくるまさりとては不似合ふにあひなりにしき上着うはぎにつゞれのはかまつぎあはしたやうなとこゝろ
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
○ 雪中せつちゆうおほかみ
○ 雪中せつちゆうおほかみ