開戸ひらきど)” の例文
どうもそんな事も不思議に存じまして、用場へ参ろうと思って、三尺ばかりの開戸ひらきどがありますから其処そこけますと、用場ではなく
物置にしてある小屋の開戸ひらきどが半分いている為めに、身を横にして通らねばならない処さえある。勾配こうばいのない溝に、ごみが落ちて水がよどんでいる。
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
見て扨は渠等かれら色事いろごとならん究竟くつきやうの事なりと彼の開戸ひらきどの處へゆきそとよりほと/\たゝきけるに中にはおたけ庭に下立おりたち何かお忘れ物に候やと小聲こごゑひながら何心なく戸を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
毒虫が苦しいから、もっと樹立こだちの少い、広々とした、うるさくない処をと、寺の境内けいだいに気がついたから、歩き出して、卵塔場らんとうば開戸ひらきどから出て、本堂の前に行った。
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
呼ばれるがまま、わたくしは窓の傍に立ち、勧められるがまま開戸ひらきどの中に這入はいって見た。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
以前の母家おもやから持って来たものであろう。家に不似合な大きな戸棚の並んでいる間から、なかに通う三尺間じゃくまを仕切っている重たい杉の開戸ひらきどを、軍隊手袋ぐんてめた両手で念入りに検査した。
巡査辞職 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
成程来て見ると茂左衞門の云った通り入口が門形もんがたちに成りまして、竹の打付ぶッつけ開戸ひらきど片方かた/\明いて居て、其処そこ按腹揉療治あんぷくもみりょうじという標札が打ってございます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
毒蟲どくむしくるしいから、もつと樹立こだちすくない、廣々ひろ/″\とした、うるさくないところをと、てら境内けいだいがついたから、あるして、卵塔場らんたふば開戸ひらきどからて、本堂ほんだうまへつた。
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
わざとらしく境のふすまが明け放しになっていて、長火鉢や箪笥たんす縁起棚えんぎだななどのある八畳から手水場ちょうずば開戸ひらきどまで見通される台処で、おかみさんはたった一人後向うしろむきになって米をいでいた。
雪解 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
取らんと云るゝこといと心苦こゝろぐるしけれど必ず母樣とともに父御をなだめ申べきにより時節を待ちたまへ我が身に於てはほかに男をもつこゝろなしと堅くちかひて別れければ腰元こしもとお竹は毎度いつもの通り吉三郎を送り開戸ひらきど
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
だ無茶苦茶に三尺の開戸ひらきど打毀うちこわして駈出したが、階子段はしごだんを下りたのか転がりおちたのかちっとも分りません。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
こは六畳ばかりの座敷にて一方に日蔽ひおおいの幕を垂れたり。三方に壁を塗りて、六尺の開戸ひらきどあり。床の間は一間の板敷なるが懸軸も無く花瓶も無し。ただ床の中央に他にたぐい無き置物ありけり。
活人形 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いずれも三尺あるかなしかの開戸ひらきどの傍に、一尺四方位の窓が適度の高さにあけてある。適度の高さというのは、路地を歩く男の目と、窓の中の燈火あかりに照らされている女の顔との距離をいうのである。
寺じまの記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
大藏はそっあとへ廻って、三尺の開戸ひらきどを見ますと、慌てゝ締めずにまいったから、戸がばた/\あおるが、外から締りは附けられませんから石をって置きまして、独言ひとりごと
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
へえ、よろしうございます。先「エー御免下ごめんください、おたのまうします。トしづか開戸ひらきどけなければいかない。小「へえー。先「エーおたのまうします/\。小僧こぞうは、ツト椅子いすはなれて小 ...
西洋の丁稚 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
とつか/\と二人で参って門の開戸ひらきどをギイと左右へ開けまする。