どほり)” の例文
自分は沢山たくさんの石段を降りる快さなどを思つて見た。急に明るいクリツシイどほりに出てきつけの珈琲店キヤツフエはひつてくことも思つて見た。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
信一郎は、ともすれば後退あとじさりしさうな自分の決心に、頻りに拍車を与へながら、それでも最初の目的どほり、夫人と戦つて見ようと決心した。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
御米およねすゝめどほりかみつたはうが、結局つまりあらたにする効果かうくわがあつたのを、つめたい空氣くうきなかで、宗助そうすけ自覺じかくした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大阪の東町奉行所は城の京橋口きやうばしぐちの外、京橋どほり谷町たにまちとの角屋敷かどやしきで、天満橋てんまばし南詰みなみづめ東側にあつた。東は城、西は谷町の通である。南の島町通しままちどほりには街を隔てて籾蔵もみぐらがある。
大塩平八郎 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
かういふ縁で二人は時々築地どほりを散歩するのださうだ。
が、ドアの外でお前が突然叫び出した声を聞くと、刀を持つてゐたわしの手が、しびれてしまつたやうに、何うしてもわしの思ひどほりに、動かないのだ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
足を痛めて居る晶子の為に馬車を探しながらナシヨナルどほりを歩いてうちに目的のロオヤル博物館へ来て仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
餘所よそくらべると閑靜かんせいはる支度したくも、御米およねからへば、ねん一度いちどいそがしさにはちがひなかつたので、あるひ何時いつどほり準備じゆんびさへいて、つねよりも簡單かんたんとし覺悟かくごをした宗助そうすけ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
大学を出て、上京して間もなく、久米と本郷どほりを歩いてゐたとき、久米は、「君はよく大学を出られたな」と云つた。それは、まさに至言である。
世に出る前後 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
本願寺も在所の者の望みどほりに承諾した。で代々だい/″\清僧せいそうが住職に成つて、丁度禅寺ぜんでらなにかのやう瀟洒さつぱりした大寺たいじで、加之おまけに檀家の無いのが諷経ふぎんや葬式のわづらひが無くて気らくであつた。
蓬生 (新字旧仮名) / 与謝野寛(著)
青年は死場所を求めて、箱根から豆相づさうの間を逍遥さまよつてゐたのだつた。彼の奇禍は、彼の望みどほりに、偽りの贈り物を、彼の純真な血で真赤に染めたのだ。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
馬鹿に閉場が遅くて電車どほりに出た頃は赤が通つてしまつた後であつた。
学生時代の久米正雄 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)