赤松あかまつ)” の例文
雪は昨夜もふりつづいたらしく、赤松あかまつがずっしりと重くえだをたれており、くぬぎ林が、雪だるまをならべたようにまるまっていた。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
〔この山は流紋凝灰岩りゅうもんぎょうかいがんでできています。石英粗面岩せきえいそめんがんの凝灰岩、大へん地味ちみわるいのです。赤松あかまつとちいさな雑木ぞうきしかえていないでしょう。
台川 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
どこかで、無心むしんにせみがうたをうたっているこえがしています。たぶん、あちらのみねうええている赤松あかまつのこずえのあたりであるとおもわれました。
黒石でつつまれた高みの上に、りっぱな赤松あかまつが四、五本森をなして、黄葉したくぬぎがほどよくそれにまじわっている。
河口湖 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
その図案を参酌さんしゃくして製作に掛かった楠公像の形は一体どういう形であるかといいますと、元弘げんこう三年四月、足利尊氏あしかがたかうじ赤松あかまつの兵を合せて大いに六波羅ろくはらを破ったので
さてこの世辞屋せじや角店かどみせにして横手よこてはう板塀いたべいいたし、赤松あかまつのヒヨロに紅葉もみぢ植込うゑこみ、石燈籠いしどうろうあたまが少し見えるとこしらへにして、其此方そのこなた暖簾のれんこれくゞつてなか這入はいると
世辞屋 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
ゆさ/\とやわらかなえそうな若葉をかぶった白樫しらかし瑞枝みずえ、杉は灰緑かいりょく海藻かいそうめいた新芽しんめ簇立むらだて、赤松あかまつあか黒松くろまつは白っぽい小蝋燭ころうそくの様な心芽しんめをつい/\と枝の梢毎うらごとに立て
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
我が日本の松にはいろいろの種類がありますが、まず最も普通なものは赤松あかまつ黒松くろまつとです。赤松は一に※松、黒松は※松といいます。これは我が邦の特産で支那にはありません。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
この宮——ただしくいえば大塔ノ宮二品親王にほんしんのうは——かくてその随身、光林坊玄尊、赤松あかまつ律師りっし則祐そくゆう木寺きでら相模さがみ、岡本ノ三河坊、村上彦四郎、片岡八郎、平賀三郎、矢田彦七らと共に
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「どうだい、赤松あかまつさまは、いつ見ても恐ろしいなあ、あのかっこうを見てくれ」
だんまり伝九 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
御養子紳六郎氏の姉君、赤松あかまつ男爵夫人の長女で登志子としこという方でした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
しもに焼けたつつじのみが幾重いくえにも波形に重なって、向こうの赤松あかまつの森につづいている。空は青々とんでおり、風もない。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
毛利をめぐ衛星えいせいとしては、播州に赤松あかまつ別所べっしょがあり、南部中国には宇喜多うきた、北部の波多野はたの一族などあって、その勢力圏せいりょくけんは、安芸あき周防すおう長門ながと備後びんご備中びっちゅう美作みまさか出雲いずも伯耆ほうき隠岐おき因幡いなば
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから、立ちあがって背のびをしたり、両腕りょううでをふりまわしたりしたあと、一人でぶらぶらと赤松あかまつの林のほうに歩きだした。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)