裸體はだか)” の例文
新字:裸体
「お化けくらゐは三杯で喰ひさうな、あの達者な妾のお吉が、裸體はだかで不忍の池に飛び込んで死んでゐるから驚くぢやありませんか」
忽ち四五十人の若者が裸體はだかになつて海に飛び込む。或人は神輿にかかる。他の人は一人一人鹿島踊の人を背に乘せて渚に運んでやる。
海郷風物記 (旧字旧仮名) / 木下杢太郎(著)
「坊んち來たな。……さア小母はんが裸體はだかにして檢査してやろ。」と、家内は幼い自分に躍りかゝつて來た。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
……彼の子供は裸體はだかになつてゐた。ムク/\と堅く肥え太つて、腹部が健康さうにゆるやかな線に波打つてゐる。そして彼にはいつか二三人の弟妹が出來てゐるのであつた。
哀しき父 (旧字旧仮名) / 葛西善蔵(著)
半纏着はんてんぎは、みづあさいしおこして、山笹やまざさをひつたりはさんで、細流さいりう岩魚いはなあづけた。溌剌はつらつふのはこれであらう。みづ尾鰭をひれおよがせていははしる。そのまゝ、すぼりと裸體はだかつた。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
翌年の春の初め、森の中には未だ所々に雪が殘つてる時分お里はまた見えなくなつた。翌日あくるひ、老爺は森の奧の大山毛欅の下で、裸體はだかにされて血だらけになつてゐる娘の屍を發見みいだした。
散文詩 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼等かれら目鼻めはなにしみるあをけぶりなか裸體はだかまゝ凝然ぢつとしてる。けぶり餘所よそれゝばあふつていへうちむかはせた。おつぎは勝手かつて始末しまつをしてそれから井戸端ゐどばたで、だら/\とれるあせみづぬぐつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
「そんなに窮屈なら裸體はだかになるさ。」
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
そんな事を言つて笑はせて居る間に、お松お村の二人の海女は、赤い帶を解いて、クルクルと裸體はだかになりました。
……また地獄ぢごくといふと、意固地いこぢをんな裸體はだかですから、りましたよ、ははは。
深川浅景 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「きりもんんとおとつつあんに叱られる。ぽん/\になるのはまだ早い。おゝ寒い寒い。」と、お駒は竹丸が裸體はだかのまゝ板の間を駈け廻るのを追ひ廻して、ふだんを着せた。さうして
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
さう言ふ平次は、さすがに初秋の夜風が肌寒く、八五郎にがれたまゝの裸體はだかで、鼻をすゝり上げてをります。
「竹さん、一寸早うおいなはれ。裸體はだかのなりでよいさかい。早う/\。」
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「でも、あの大夕立の中を、神田一番の綺麗な年増が裸體はだかで屋根を渡つて人殺しに行つたと聽いた時は、全く、そいつを見たら孫子の代までも話の種だらうと思ひましたよ」
お前は腰卷一つの裸體はだかになつて、物干から屋根に降り、隣りの空地に建てた假舞臺の足場を渡り、あの樂屋から小三郎が忘れて行つた匕首あひくちを持つて、板塀を越してお園の家の裏から入り
いよ/\九十八人全部裸體はだかになつてしまつて、この日の一等は、胸から背へかけて、胴一杯に、きつね嫁入よめいりを彫つた遊び人と、背中一面に大津繪おおつゑ藤娘ふぢむすめを彫つた折助とが爭ふことになりましたが
大盥おほだらひは湯を張つたまゝですが、肝腎のお常は一糸もまとはぬ湯上がりの裸體はだかで、井戸端の柱に自分の扱帶しごきで縛り付けられ、死んだか目を廻したか、流しの上に投り出されたやうに倒れてゐるのです。
「第一に小三郎は昨夜ゆふべ亥刻よつ(十時)少し前に自分の家へ歸つて、亥刻半よつはん(十一時)には佐竹の賭場とばへ潜り込み、曉方まで裸體はだかに剥がれてゐますよ。證人が十人もあるから、こいつは嘘ぢやありません」
「さぞ綺麗なことだらうな——裸體はだかで玉の輿に乘るやうぢや」
「旗本旗野丹後守樣のお小間使が、大泥棒の手先になつて成敗されるが、身許がわからないので、夕刻裸體はだかに剥いて湯島天神町の辻番にさらし物にするさうだ。心當りの者は申出るやうに、褒美は小判で五兩だとよ」
お常は、お紋が憎かつたのだ。申し分なく綺麗で、若くて陽氣で、男に大騷ぎされるお紋が、心の底から憎かつたのだ。その上お紋は叔母のお常が井戸端に裸體はだかで縛られたのは、自分でやつた芝居と見破つたことを