薄白うすじろ)” の例文
昨夜ゆうべまゝ盛高もりだかな形をして居た火は夢を見て居た塚の中の骨の様にもろく崩れて刹那せつなに皆薄白うすじろい灰に成つて仕舞しまつた。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
た※渺々べう/\としてはてもない暗夜やみなかに、雨水あめみづ薄白うすじろいのが、うなぎはらのやうにうねつて、よどんだしづかなみが、どろ/\と線路せんろひたしてさうにさへおもはれる。
銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そのうち、障子しやうじだけがたゞ薄白うすじろ宗助そうすけうつやうに、部屋へやなかれてた。かれはそれでもじつとしてうごかずにゐた。こゑして洋燈らんぷ催促さいそくもしなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
足もとに近い水の上に薄白うすじろと薄むらさきの小さい花がぼんやりと浮いて流れているのが眼につきました。
水鬼 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
私は、不思議な人情をくぐった老女の顔にかげのように薄白うすじろいような希望のいろを、しみじみとながめた。そして一人の女性にこうまで深く染み通らせた白痴少年の一本気をもおもってみた。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
同時にネットの右や左へ薄白うすじろい直線をほとばしらせる。あれはたまの飛ぶのではない。目に見えぬ三鞭酒シャンパンを抜いているのである。そのまた三鞭酒シャンパンをワイシャツの神々が旨そうに飲んでいるのである。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
のろはれたみち薄白うすじろみち
晶子詩篇全集 (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
……さきへ/\、くのは、北西きたにしいちはうで、あとから/\、るのは、東南ひがしみなみ麹町かうぢまち大通おほどほりはうからである。かずれない。みち濡地ぬれつちかわくのが、あき陽炎かげろふのやうに薄白うすじろれつゝ、ほんのりつ。
番茶話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
たゞ白いあはの大きなかたまり薄白うすじろく見えた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)