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落款
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らっかん
ふりがな文庫
“
落款
(
らっかん
)” の例文
橋口君が唸りたい一方なら、この中老は
抹
(
なす
)
りたい一方で、斯ういう会合には
落款
(
らっかん
)
まで懐中に忍ばせている。
真
(
まこと
)
に用意周到なものだ。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
夏目先生は書の
幅
(
ふく
)
を見ると、独り
語
(
ごと
)
のように「
旭窓
(
きょくそう
)
だね」と云った。
落款
(
らっかん
)
はなるほど
旭窓外史
(
きょくそうがいし
)
だった。自分は先生にこう云った。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
たまたま、武蔵筆ぐらいな、簡単な
落款
(
らっかん
)
の記入したものもあるが、年号とか、
自賛
(
じさん
)
とかのある物は、まったくないといっていい程である。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落款
(
らっかん
)
というものは極めて少ないから、いずれをいずれと、
玄人
(
くろうと
)
でも判断のつきかねることがあるが、よく見れば必ず、永徳は永徳であり
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
ところが近世の「美術品」と呼ばれているものを見ますと、どれにも皆
銘
(
めい
)
が書き入れてあります。または
落款
(
らっかん
)
が押してあります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
▼ もっと見る
落款
(
らっかん
)
をしてそして身体を起した。すッとあたりが明るくなった。外した右手の袖を入れて襟を正し、まだ濡れている自分の文字を眺めていた。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
紫に描いた。すべてが
銀
(
しろかね
)
の中から
生
(
は
)
える。銀の中に咲く。落つるも銀の中と思わせるほどに描いた。——花は
虞美人草
(
ぐびじんそう
)
である。
落款
(
らっかん
)
は
抱一
(
ほういつ
)
である。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
落款
(
らっかん
)
らしいものもなかったけれど、僕はひとめで青扇の書いたものだと断定を下した。つまりこれは、自由天才流なのであろう。僕は奥の四畳半にはいった。
彼は昔の彼ならず
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
そのお返しに、来の宮で重箱のウナギをごちそうになり、「東男」と
落款
(
らっかん
)
のあるアヤメの色紙をいただいたことも、今は昔のなつかしい思い出のひとつになった。
江戸前の釣り
(新字新仮名)
/
三遊亭金馬
(著)
或は知っている作家かとも思うが、少し遠いので
落款
(
らっかん
)
をはっきり見ることが出来なかった。
中支遊記
(新字新仮名)
/
上村松園
(著)
一番しまいに法橋光琳という字が書いてありますが、あれだけのものですから、なんとか
勿体
(
もったい
)
つけて
落款
(
らっかん
)
しそうなんですが、それが手紙を書くようにすらすら書いてあります。
書道と茶道
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
古びてはいるが貼り雑ぜの襖、脇床を持った床の間には、呉春の軸がかけてあり、部屋の隅に立ててある二枚折れの屏風、それには荻生徂徠の書が、
落款
(
らっかん
)
も鮮かに記されてある。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
此の絵と
対幅
(
ついふく
)
を成して、同じ箱の中に入れてある他の一幅は、公の夫人の像である。どちらにも
落款
(
らっかん
)
はないけれども、同一の畫家がほゞ同じ時に描いたものと推定して間違いはあるまい。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
女中に案内されて奥へ来てみると、小田原ほど立派ではないが木の
香
(
か
)
がプンプンしている二尺の一間床に、小田原と同じ
蝦夷菊
(
えぞぎく
)
が
投入
(
なげいれ
)
にしてある。
落款
(
らっかん
)
は判からぬが
円相
(
えんそう
)
を描いた
茶掛
(
ちゃがけ
)
が新しい。
斬られたさに
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「お父さん、ここに
落款
(
らっかん
)
が
宗紫山
(
そうしざん
)
としてありますね。」
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
額は無
落款
(
らっかん
)
だったのである。
次郎物語:03 第三部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
これが
落款
(
らっかん
)
のつもりでしょう。「湖海侠徒雲井竜雄」というのが、この男の好んで用いる変名であろうと白雲が考えました。
大菩薩峠:31 勿来の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
旨
(
うま
)
いのか
不味
(
まず
)
いのか
判然
(
はっきり
)
とは解らなかった。
印譜
(
いんぷ
)
をしらべて見ると、渡辺崋山にも横山華山にも似寄った
落款
(
らっかん
)
がない。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
新井
洞巌翁
(
どうがんおう
)
からわらわれて、すべて敬題というふうに謹んで賛語を書く場合のものは、左が初句で、左から読んで筆者の
落款
(
らっかん
)
が末尾となるのですと教えられた。
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と向き直って、
落款
(
らっかん
)
を検めたが、ハッキリ読めない。社長の腰巾着として始終
書画骨董
(
しょがこっとう
)
のお太鼓を叩いている関係上、自然多少の興味がある。頻りに首を傾げていた。
負けない男
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その他にも茶席の存在する「仲麿堂」の額がある。これも高橋義雄氏の書のように
落款
(
らっかん
)
されてあるが、実は某書家の筆に成る物ではないか。小生は碑の
外
(
ほか
)
、更にこのことあるをしばしば暗示した。
高橋箒庵氏の書道観
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
一 どこにも
落款
(
らっかん
)
が見られぬこと。
益子の絵土瓶
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
その
落款
(
らっかん
)
に書いてある
筒井憲
(
つついけん
)
という名は、たしか
旗本
(
はたもと
)
の書家か
何
(
なに
)
かで、大変字が上手なんだと、十五、六の昔
此所
(
ここ
)
の主人から教えられた事を思い出した。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
光悦筆と
落款
(
らっかん
)
をした六曲の
屏風
(
びょうぶ
)
に、すべて秋草を描いてある。弁信には見えないながら、見る人が見ると、すべてが光悦うつしといったように出来上っている。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
尚お三
猿亭主人
(
えんていしゅじん
)
と
落款
(
らっかん
)
がしてある。自分のことだ。他が右と言えば左と言いたいのだから仕方がない。尤も社会の
木鐸
(
ぼくたく
)
としては、
大
(
おおい
)
に見大に聞き大に言うのは大に宜しい。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
落款
(
らっかん
)
も印章もないが、武蔵画の作品中、第一作であり、また秀潤な傑作といわれている六曲屏風一双の「蘆雁図」は、明治二十年頃までは、熊本の北岡邸にあって、たれもそれ程な名画とも、また
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
四五軒の道具屋を持って廻ったら、
落款
(
らっかん
)
がないとか、
画
(
え
)
が
剥
(
は
)
げているとか云って、老人の予期したほどの尊敬を、懸物に払うものがなかったのだそうである。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
その下の
落款
(
らっかん
)
を見ると、「一休純」と読める。そこで道庵先生が
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
『
落款
(
らっかん
)
を』
田崎草雲とその子
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
仰向
(
あおむけ
)
に寝ながら、偶然目を
開
(
あ
)
けて見ると
欄間
(
らんま
)
に、
朱塗
(
しゅぬ
)
りの
縁
(
ふち
)
をとった
額
(
がく
)
がかかっている。
文字
(
もじ
)
は寝ながらも
竹影
(
ちくえい
)
払階
(
かいをはらって
)
塵不動
(
ちりうごかず
)
と明らかに読まれる。
大徹
(
だいてつ
)
という
落款
(
らっかん
)
もたしかに見える。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
宗助は
膝
(
ひざ
)
を突いて銀の色の黒く
焦
(
こ
)
げた
辺
(
あたり
)
から、葛の葉の風に裏を返している色の乾いた様から、
大福
(
だいふく
)
ほどな大きな丸い朱の
輪廓
(
りんかく
)
の中に、
抱一
(
ほういつ
)
と行書で書いた
落款
(
らっかん
)
をつくづくと見て
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
“落款”の意味
《名詞》
落 款(らっかん)
作者が書画に署名や押印をすること。
作者が書画にする署名や印。
(出典:Wiktionary)
“落款”の解説
落款(らっかん)とは、落成款識(らくせいかんし)の略語で、書画を作成した際に製作時や記名、識語(揮毫の場所、状況、動機など)、詩文などを書き付けたもの、またその行為を言う。その文を款記といい、その時捺す印章を落款印と言う。慣習上、署名として押捺された印影、または署名に代えて押捺した印影をさすことも多い。署名用の印そのものを落款と称することもある。
(出典:Wikipedia)
落
常用漢字
小3
部首:⾋
12画
款
常用漢字
中学
部首:⽋
12画
“落”で始まる語句
落
落胆
落着
落魄
落葉松
落人
落葉
落籍
落付
落語家