)” の例文
などとわめく。赫燿かくやくたる大蟹を篝火かがりびは分ったが、七分八分は値段ではない、の多少で、一貫はすなわち十分いっぱいの意味だそうである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「なァに食べられないことは無いよ。が少し柔いが……。」と、之を外し与ふれば、小児は裾に包み、一走ひたはしりに走り去れり。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
それその麁朶そだべてな、ぱッ/\ともやしな……さア召上りまし、此方こっちが柔かなのでございますから、さア御比丘様
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「お皿のなかのビフテキめ、羊の肉ならよかんべえ、もしか小猫のだつたら、やつとこさで逃げ出しやれ。」
魚肉などで味の深い個所は、魚が生存中、よく使った体の部分にある。例えばひれの附根のだとか、尾の附根の部分とかである。素人は知らないから、そういうところを
仏教人生読本 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
中にもそのずらかな恰好の乳房は、神秘の国に生れた大きな貝のかなぞのようにき活きとした薔薇色に盛り上って、煌々こうこうたる光明の下に、夢うつつの心をほのめかしております。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
乳がないので、毎日粥を作って粥汁おもゆをのませる。歯が生え出すと、鯉鮒のをむしって、かけかかった歯に噛んでくくめる。「這えば立て、立てば歩めと親ごころ、吾身につもる老を忘れて」
漁師の娘 (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
主『さうか。これは千住のか。道理で骨が硬くて、に旨味が少いと思ツた。さきから、さう言へばいに…………。』
元日の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
「月は寒し、炎のようなその指が、火水となって骨に響く。胸は冷い、耳は熱い。は燃える、血は冷える。あっ、」
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
花魁に聞かしいねえ、若旦那の飯のくいぷりが気に入っちまった、かれいのお肴か何かの時は其の許嫁のお嬢さんが綺麗に骨を取ってをむしって、若旦那私がむしって上げますと云って
小猫のなら
艸木虫魚 (新字新仮名) / 薄田泣菫(著)
私、斬られるかと思って可恐こわかったわ、ねえ、おしりが薬になると云うんでしょう、ですもの、危いわ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
うらみと、ひがみいきどおりとをもって見た世に対して、わば復讎ふくしゅう的におのれが腕で幾多遊冶郎ゆうやろうを活殺して、そのくらい、その血をむることをもって、精魂の痛苦をいやそうとしたが
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
阿鼻焦熱あびしょうねつ苦悩くるしみから、手足がはり、きりこまざいた血の池の中で、もだくるしんで、半ばき、半ば死んで、生きもやらねば死にもらず、死にも遣らねば生きも遣らず、うめき悩んでいた所じゃ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
これ、静かにさっせえ、だ、術だてね。ものその術で、背負引しょびき出して、お前様天窓あたまから塩よ。わしは手足い引捩ひんもいで、月夜蟹でがねえ、とろうとするだ。ほってもない、開けさっしゃるな。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
瓜番の小屋へ自分で火をつけたのは尋常ただごととは思わなかったが。……ただ菜売とだけ存じました。——この頃土地の人に聞くと、それは、夏場だけ、よそから来て、を売る女の事だと言います。
河伯令嬢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)