絞殺しめころ)” の例文
雉も鋭いくちばしに鬼の子供を突き殺した。猿も——猿は我々人間と親類同志の間がらだけに、鬼の娘を絞殺しめころす前に、必ず凌辱りょうじょくほしいままにした。……
桃太郎 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
「お春は聖堂裏で笠の赤い紐で絞殺しめころされ、ここまで引っ担いで来てほうり込まれたんだ。昨夜は全く、鼻をつままれても解らない闇だった」
石黒氏は相手の鼻先で大きな掌面てのひらつた。病身な成金の女房かない位だつたら、一思ひに絞殺しめころされさうな大きな掌面である。
それから、戸外そと絞殺しめころして、屍体の首を綱にかけ、その後あかつき近くになって母を刺し殺した——と。なお、都合のよいことに、喜惣は白痴なんですわ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
權「黙れ、おれア見ていたぞ、咬付きもしねえ犬を斬るには何か理由わけがあるだろう、云わなければうぬ絞殺しめころすが何うだ」
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
奥様おくさまやあ、』とんだ。ヒイとこれ悲鳴ひめいげるやうで、家内かない絞殺しめころされるさけびにこえる、たまりません。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お前の母は寝床の中で絞殺しめころされがけに随分苦しんでいるらしく、その絞めた疵痕が二重にも三重にもなっている位だから、横に寝ているお前が眼を醒さない筈はない。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
當分たうぶん押込おしこめおきなほたすけ候半んと存ぜし中相役の立花左仲と申者竊に主人しゆじんと申合せ絞殺しめころし其儀に付右等の儀は全くあとにてうけたまはりたることゆゑ萬事の儀ども相違さうゐ仕つりて候と申たてけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
遂に夜な/\恐しき夢に襲はれ候やうに相なり候間、せめて罪滅つみほろぼしにと、慶蔵の墓のみならず、往年溜池ためいけにて絞殺しめころし候浄光寺の所化しょけ得念とくねんが墓をも、立派に建て、厚く供養くようは致し候へども
榎物語 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
いわゆるのこぎりの目を立てるようなヴァイオリンやシャモの絞殺しめころされるようなコロラチゥラ・ソプラノでもそこらここらで聴かされ、加之おまけにラジオで放送までされたら二葉亭はとても助かるまい。
二葉亭余談 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
つい今年の三月、熱海へ奉公に出ておった、お前ぐれえな新造しんぞがの、親里の吉浜へ、雛の節句に帰るッて、晩方通りかかっての、絞殺しめころされた処だぜ、なあ、おじい。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
結局戸外で絞殺しめころしたものを運び入れて、自殺を装わせたという結論になってしまうのですよ。
白蟻 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
あんな光景ものを見なければよかった。今夜まで何も知らずに寝ていたらドンナにか気楽でよかったろう。明日あすの朝起きてみたら、皆騒いでいる。材木置場おきばで可愛い娘が絞殺しめころされている。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
其方儀そのはうぎ先年京都日野家につとめちう種々しゆ/″\惡事あくじに及び其上嘉川主税之助方に於て主人しゆじんの惡事を助け先代平助嫡子ちやくし藤五郎藤三郎に無禮ぶれい法外はふぐわいの儀を働き侍女こしもとしま絞殺しめころし候だん重々ぢう/\不屆ふとゞきつき獄門ごくもん申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「勘太郎を殺して、この巾着を奪つた者が、三日前に隱居を絞殺しめころしたのさ」
「さあ、白状しろ。さもないと、貴様を絞殺しめころすぞ。」
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
惣「アヽお母様っかさまうして絞殺しめころされたかねえ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
隱居の勘兵衞は、ガラツ八の見屆けた通り、床の中で絞殺しめころされて居ります。これは枯木のやうな老人ですから、目ざといのにとがめられさへしなければ、年寄にも女にも殺せないことはありません。