破滅はめつ)” の例文
なるほどそういう例もあるかも知れぬ。しかし、それも人間というものが結局は破滅はめつに終るという一般的な場合の一例なのではないか。
弟子 (新字新仮名) / 中島敦(著)
女よりもスリルがあるという競馬の魅力に惹かれて来たという気持でもなかった。この最後の一日で取り戻さねば破滅はめつだという気持でもなかった。
競馬 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
「ああ、これでいい。下界げかい破滅はめつちかづいた。」といいながら、あるいていますうちに、いつしかまちてしまいました。
消えた美しい不思議なにじ (新字新仮名) / 小川未明(著)
と、東儀もさすがに、死をもって、子の破滅はめつを救おうとする親心の前には、太い息をついて、腕をんでしまった。
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
農村のうそん天道様てんとうさまの信心が無くなったら、農村の破滅はめつである。然るに此信心は日に/\消亡しょうもうして、人智人巧唯我唯利の風が日々農村人心の分解ぶんかいうながしつゝあるのだ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
「餘計なことを知つて居たからだ。あの前の日もお信は三之助と何やら話して居たが、敬太郎は、自分とお蘭のことを言はれると身の破滅はめつだと思つたに違ひない」
これがわたくし破滅はめつもといだったのでございます。その性質せいしつはこちらの世界せかいてもなかなかけず、御指導ごしどう神様かみさまたいしてさえ、すべてをかくそうかくそうといたしました。
いま原田はらだ嫁入よめいりのことにはつたれど、其際そのきはまでもなみだがこぼれてわすれかねたひとわたしおもふほどは此人このひとおもふて、ゆゑ破滅はめつかもれぬものを、此樣このやう丸髷まるまげなどに
十三夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「しかし、そんなことが日本の破滅はめつを救うのに何の役に立ちますか。」
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
それがもとこと破滅はめつりさうで、危險きけん不可いけない。
艶書 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
くれなゐの破滅はめつをさそふ。
第二邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
奈落ならくへ突きのめされた梅雪は、あたかも虎穴こけつをのがれんとして、龍淵りゅうえんにおちたような破滅はめつとはなった。もうこのうえはいちかばちか、いのちはただそれ自分をたのむことにあるのみだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたしおもった。人間にんげんには、みずからをまもり、あいてをとうとぶといううつくしいみちがあったのをわすれたからである。それで、破滅はめつをいそぐような、自殺じさつをしたり、戦争せんそうこしたりするのだ。
アパートで聞いた話 (新字新仮名) / 小川未明(著)
よしんばどんな證據があつたにしたところで、お吉さんにお白洲しらす砂利じやりを噛ませて、笹野の旦那の破滅はめつにはしたくねえ。解つたかい、石原の。お願げえだから、その繩を解いて俺に渡してくれ。
まえには忍剣にんけん、横には伊那丸いなまるの太刀、足をつかまれて立ちすくみになった呂宋兵衛るそんべえは、いよいよいまが最後とみえたが、いつもこうした破滅はめつには、かならず南蛮流幻術なんばんりゅうげんじゅつ姿すがたを消すのが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「馬鹿ツ、何をする。姉も京之助も破滅はめつだぞツ」
破滅はめつ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)