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目蓋
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まぶた
ふりがな文庫
“
目蓋
(
まぶた
)” の例文
弟はまだよく歩けない時分に、火鉢の角にぶつかって、どっちかの
目蓋
(
まぶた
)
に傷をして、後になっても、その傷跡が消えずに残っていた。
生い立ちの記
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
幹子
(
みきこ
)
の
目蓋
(
まぶた
)
は、もう開けられないほど重くなって来ました。けれどお月様は、やっぱり窓からお母様や幹子の寝床を
照
(
てら
)
しました。
夜
(新字新仮名)
/
竹久夢二
(著)
お庄はまだ
目蓋
(
まぶた
)
の
脹
(
は
)
れぼったいような顔をして、寝道具をしまった
迹
(
あと
)
を掃いていた。お鳥は急いで
襷
(
たすき
)
をかけて、次の間へハタキをかけ始めた。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
ふと、私は、
目蓋
(
まぶた
)
の熱いのを意識した。こんなに陰で私を待っていた人もあったのだ。生きていて、よかった、と思った。
新樹の言葉
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「わしにも、貴様の気持は、いくらか解るようだ。是非に欲しいと思い込んだら、手に入れぬ中は、
目蓋
(
まぶた
)
も合わぬというような気持は誰にもある」
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
彼女の
目蓋
(
まぶた
)
がそっと上がって、またもやその明るい眼がわたしの前に優しく
輝
(
かがや
)
き出したかと思うと、またしても彼女はにっとあざけるように笑った。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
すると兄ははら/\しながら、美しく重圧して来る弟の黒い瞳に堪へないやうに眼を伏せて
目蓋
(
まぶた
)
をぴり/\させ
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
ですから遠藤はこれを見ると、さては計略が露顕したかと思わず胸を
躍
(
おど
)
らせました。が、妙子は相変らず
目蓋
(
まぶた
)
一つ動かさず、
嘲笑
(
あざわら
)
うように答えるのです。
アグニの神
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
わたしが大きな物音をたてると
頸
(
くび
)
をさしのばし、頸の羽毛を立て、眼を大きく見ひらくのだが、じきにまたその
目蓋
(
まぶた
)
が垂れてきてお辞儀をはじめるのだ。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
目を開けると直ぐ消えて仕舞ふ。疲れ切つて居る体は眠くて堪らないけれど、強ひて目を瞑ると、死んだ赤ん坊らしいものが
繊
(
ほそ
)
い指で頻に
目蓋
(
まぶた
)
を剥かうとする。
産褥の記
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
その靴の音が高く響いた時は、もはやお葉の眼はすべて曇って霞のやうにかすんで、なんにも見えなかった。涙が閉ぢた
目蓋
(
まぶた
)
から、ボロ/\と頬をつたはった。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
その目は外に向けられずに、ひたすら心の奥底を見透しでもするように、
目蓋
(
まぶた
)
の下で静かに廻転している。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
ワーリカはブラッシをとり落とすが、すぐさま頭を振り、眼をむきだして、そのへんのものが
目蓋
(
まぶた
)
のなかで、伸びたり動いたりしないように、懸命にじっと見つめる。
ねむい
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
父は
目蓋
(
まぶた
)
をとじて母へ何か
優
(
やさ
)
し
気
(
げ
)
に語っていた。「今に見いよ」とでも
云
(
い
)
っているのであろう。
風琴と魚の町
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
その重なり合つた上下の
目蓋
(
まぶた
)
の間からかすかに
漏
(
も
)
れてゐるらしい視線は、よく見ると、下に横たはつてゐる裸かの男の
髯
(
ひげ
)
もじやの顔をじつと眺めてゐるやうでもありました。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
瞑
(
つぶ
)
った
目蓋
(
まぶた
)
からは、熱い涙が
絶間
(
とめど
)
もなく
流出
(
ながれだ
)
して、頬を伝って落ちましたのです。馬は繋がれたまま、
白樺
(
しらはり
)
の根元にある笹の葉を食っていたのですが、急に首を揚げて聞耳を立てました。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二十年の間この山を取り巻いていた呪いの霧が、蛇の鱗のように
剥
(
は
)
がれ落ちて、おおどかな梵音のひびく限りは、谷底に寝ほうけた
蝦蟇
(
ひきがえる
)
まで、薄やにの
目蓋
(
まぶた
)
をあけながら仏願に喰い入って来ようわ。
道成寺(一幕劇)
(新字新仮名)
/
郡虎彦
(著)
海老塚医師は脈をとり、
目蓋
(
まぶた
)
をひっくりかえしたりして
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
庸三はいつごろまで仰向きになった目の上に「痴人の告白」を持ちこたえていたろうか、するうちに
目蓋
(
まぶた
)
が重くなって電燈を
薄闇
(
うすぐら
)
くして
睡
(
ねむ
)
った。
仮装人物
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
なれど隠者は
悪魔
(
ぢやぼ
)
の
障碍
(
しやうげ
)
が
猶
(
なほ
)
もあるべいと思うたれば、夜もすがら御経の力にすがり奉つて、
目蓋
(
まぶた
)
も合はさいで
明
(
あか
)
いたに、やがてしらしら明けと覚しい頃
きりしとほろ上人伝
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
周囲の山に住むモルモットのようにそれは
目蓋
(
まぶた
)
をとざして三カ月、またはそれ以上も冬眠に入るのである。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
彼女は、その言葉を聞きながら、気力なさゝうに
目蓋
(
まぶた
)
を閉ぢた。もう、何も考へる事は出来ない。この夜も明けるんだと思へば、彼女の心に思ふ事も、見ることもいらない。
青白き夢
(新字旧仮名)
/
素木しづ
(著)
兄の息子は、膨れ
目蓋
(
まぶた
)
のしじゆう涙ぐんでゐるやうに見える、皮膚の水つぽい青年だつた。
過去世
(新字旧仮名)
/
岡本かの子
(著)
私は、眼に色ガラスのようなものでもかかったのかと思い、それをとりはずそうとして、なんどもなんども
目蓋
(
まぶた
)
をつまんだ。私は誰かのふところの中にいて、
囲炉裏
(
いろり
)
の焔を眺めていた。
玩具
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
……それから十五分すると、わたしはもう幼年学校生やジナイーダと、
鬼
(
おに
)
ごっこをしていた。わたしは泣かずに、笑っていたけれど、泣きはらした
目蓋
(
まぶた
)
は、笑うたんびに涙をこぼすのだった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
なんとなくそんな気がしたのです。しばらくその顔を見守つてゐましたが、べつに起きだすやうな
気色
(
けしき
)
はなく、身じろぎ一つしません。薄く開いてゐる
目蓋
(
まぶた
)
のあひだが、なんだか青い
淵
(
ふち
)
のやうでした。
死児変相
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
と
素気
(
そっけ
)
なく言ってすぐ入口にまごついている加世子に目を見張った。この眼も若い時は深く澄んで張りのある方だったが、今は
目蓋
(
まぶた
)
にも少し
緩
(
たる
)
みができていた。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
が、妙子は相変らず
目蓋
(
まぶた
)
一つ動かさず、
嘲笑
(
あざわら
)
ふやうに答へるのです。
アグニの神
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
そこでは焼いたり切つたりするのは、
徒
(
いたづ
)
らに
目蓋
(
まぶた
)
を傷つけるばかり、
反
(
かへ
)
つて
目容
(
めつき
)
を醜くするし、気永に療治した方がいゝといふので、其の通りにしてゐるのであつた。
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
参謀はちょいと
目蓋
(
まぶた
)
を挙げた。
将軍
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
圭子はよく彼女を
捉
(
つかま
)
へて、
注
(
さ
)
し
薬
(
ぐすり
)
をたらして
滲
(
し
)
みこませるために、
目蓋
(
まぶた
)
を
剥
(
む
)
きかへして、何分かのあひだ抑へてゐるのであつたが、片目の
目脂
(
めやに
)
が少し減つたと思ふと
チビの魂
(新字旧仮名)
/
徳田秋声
(著)
「ふむふむ。」と、浅井は莨を
喫
(
ふか
)
しながら、少しずつほぐれて来るお今の話に、気軽な
応答
(
うけこたえ
)
をしていたが、じきに
目蓋
(
まぶた
)
の重そうな顔をして、二階へ引き揚げて行った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
母親は
傍
(
はた
)
の話を聞きながら時々針を持ったまま前へ突っ伏さるようになっては、また重い
目蓋
(
まぶた
)
を開いて、機械的に手を動かした。お庄はその様子を見て腹から笑い出した。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
父親が目を
拭
(
ふ
)
きながら繰り返し呼んだが、
頷
(
うなず
)
く力もなく、
目蓋
(
まぶた
)
も重たげであった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
病院以来、めっきり気分のだらけて来たお今は、まだ
目蓋
(
まぶた
)
などの
脹
(
は
)
れぼったい、眠いような顔をして、茶の
室
(
ま
)
の薄暗いところにある鏡の前へ立っては髪を気にしたり、白粉を塗ったりしていた。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
浅井は重い
目蓋
(
まぶた
)
をとじながら、
懈
(
だる
)
そうに笑った。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
“目蓋(まぶた)”の解説
まぶた(瞼/𥇥、目蓋)は、脊椎動物の魚類を除く多くの種にある、顔の皮膚から連続して眼球(目玉)を上下から覆い保持する不透明で開閉式の器官である。「目蓋」という字からも分かるように、眼球(目)の蓋のような役割を果たしている。眼瞼(眼𥇥、がんけん)ともいう。
上側を上瞼(上𥇥、うわまぶた)、下側を下瞼(下𥇥、したまぶた)という。
(出典:Wikipedia)
目
常用漢字
小1
部首:⽬
5画
蓋
常用漢字
中学
部首:⾋
13画
“目”で始まる語句
目
目的
目出度
目前
目標
目貫
目覚
目論見
目下
目論