白衣びやくえ)” の例文
さうして、翌日の出立に、源右衞門の家の勢揃ひへ眞ツ先きに行つたのは文吾で、白衣びやくえに脚絆甲掛けの姿が可愛らしかつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
顔、白衣びやくえ金剛石ダイアモンドのブロオチ——何一つ動いてゐるものはない。その中に唯線香だけは一点の火をともした先に、ちらちらと煙を動かしてゐる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
み、くるしみ、疲れた冬の一日ひとひは次第に暮れて行くのである。其時白衣びやくえを着けた二人の僧が入つて来た。一人は住職、一人は寺内の若僧であつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
ベアトリーチェは、あたかも物言はんと思ひつゝ言はざる人の如くなりし我を惹行ひきゆき、さていひけるは。見よ白衣びやくえむれのいかばかり大いなるやを 一二七—一二九
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
白衣びやくえかすかに、撫子とこなつ小菊こぎくの、藤紫地ふじむらさきぢ裾模様すそもやう小袖こそでを、亡体ばうたいけた、のまゝの、……友染いうぜんよ。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と拍子ごとに云ふ踊で、姿は白衣びやくえ腰衣こしごろもを穿いた所化しよけを装つて居るのです。踊手は三人程で、音頭とりが長い傘をさして真中に立ち、その傘の柄を木で叩くのが拍子なのです。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
え/″\として硝子がらすのそとに、いつからかいとのやうにこまかなあめおともなくつてゐる、上草履うはざうりしづかにびしいひゞきが、白衣びやくえすそからおこつて、なが廊下らうかさきへ/\とうてく。
(旧字旧仮名) / 水野仙子(著)
ぼたん桜ここだくてりあまたちがひもかけ渡し白衣びやくえすかも
(新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
白衣びやくえの 神女みこは くちびるが あか
秋の瞳 (新字旧仮名) / 八木重吉(著)
白衣びやくえ男女なんによおもてをつゝみ
偏奇館吟草 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
白衣びやくえなびきゆららに
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
白衣びやくえほのぼの——
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
白衣びやくえ淺黄あさぎの袴の平服になつて、居室ゐまの爐の前に坐つた道臣は、ポン/\と快い音のする手を二つ鳴らしてお駒を呼んだ。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
ぬのを掲げた部屋の中には大きい黒檀こくたん円卓テエブルに、美しい支那しなの少女が一人ひとり白衣びやくえ両肘りやうひぢをもたせてゐた。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其時、白衣びやくえ袈裟けさを着けた一人の僧が奥の方から出て来た。奥様の紹介ひきあはせで、丑松は始めて蓮華寺の住職を知つた。聞けば、西京から、丑松の留守中に帰つたといふ。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
白衣びやくえきえゆく。
春鳥集 (旧字旧仮名) / 蒲原有明(著)
外の闇夜へ揺ぎいだいたに、如何なこと、河のほとりには、年の頃もまだ十には足るまじい、みめ清らかな白衣びやくえのわらんべが、空をつんざいて飛ぶ稲妻の中に、頭をれて唯ひとり
きりしとほろ上人伝 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
髪は水色の紐にむすんだ、日本の少女と同じ下げ髪、着てゐる白衣びやくえは流行を追つた、仏蘭西フランスの絹か何からしい。その又柔かな白衣の胸には金剛石ダイアモンドのブロオチが一つ、水水しい光を放つてゐる。
わが散文詩 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)