白墨はくぼく)” の例文
警官はそれを聞きながら白墨はくぼくで腰掛のようなところへ何か書き止めていた。なかなか忙しそうである。私は少し気の毒になって来た。
雑記(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
彼の歩調もゆるんだ。丁度ちょうど二人が目的の部屋の前に来たからである。黒いうるしをぬった札の表には、白墨はくぼくで「病理室」と書いてあった。
(新字新仮名) / 海野十三(著)
〔キッコは筆記帳ひっきちょうをもってはねあがりました。〕そして教壇きょうだんへ行ってテーブルの上の白墨はくぼくをとっていまの運算うんざんを書きつけたのです。
みじかい木ぺん (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
二時間目に白墨はくぼくを持って控所を出た時には何だか敵地へ乗りむような気がした。教場へ出ると今度の組は前より大きなやつばかりである。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
見ると、彼は漫然と雑巾がけをしているのではなくて、その扉へ誰かが白墨はくぼくでいたずら書きをしたのを、きとっていたのだ。
魔術師 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
眤と真黒く拭い清められた板を見上て、やがてそれをゆびさして子供を顧みた。……黒板の下の溝には白墨はくぼくが二本置かれてある。
(新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、このグルストン街の角で、犯人はあの、有名な「殺人鬼ジャックの宣言メッセイジ」をそこの壁へ白墨はくぼくで書いたのである。
女肉を料理する男 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
狐につままれたようにトラック小屋の方に来ると、緑色のトラックの箱に、白墨はくぼくで何やら書いてあるのが眼に入った。
糞尿譚 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
ところが、ヨハンネスの口から、ただひとこと「くつ」とでたとき、お姫さまの顔はさっとかわって、白墨はくぼくように白くなりました。そうして、からだじゅう、がたがたふるえていました。
すなわち、時遷は空櫃を負って、梁山泊までの陸路をただの旅人のように旅籠はたご泊りをかさねて行く。泊り先の宿屋の軒には、かならず目印めじるしとして、白墨はくぼくでどこかへ丸を描いて残しておく。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
子供が黒板こくばん白墨はくぼく悪戯いたづらに書いた算用数字。2、2、2、2、2、2。
動物園 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
白墨はくぼくがなくなったから、誰か教員室へ行って持って来て下さい」
凡人伝 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
「ではくつのあとと白墨はくぼくの線とを見てくれたまえ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
「じゃあ、その縄はうんと高く張らなくちゃあね。それから、くぐり戸を入ったすぐの壁に、自分の名前を白墨はくぼくで書かせようや」
骸骨館 (新字新仮名) / 海野十三(著)
漢学の先生が出て来る。野だが出て来る。しまいには赤シャツまで出て来たが山嵐の机の上は白墨はくぼくが一本たてに寝ているだけで閑静かんせいなものだ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
先生はそれを一寸見てそれから一言か二言質問をして、それから白墨はくぼくでせなかに「及」とか「落」とか「同情及」とか「退校」とか書くのでした。
白墨はくぼくでその辺の壁に矢の印を書いてまわったり、金持らしい通行人を見かけると、自分が掏摸すりにでもなった気で、どこまでもどこまでもそのあとを尾行して見たり
屋根裏の散歩者 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そうすると他の生徒は後からも前からも一時に囃し立て鼻緒の切れた草履ぞうりを投げ付けたり、たがいに前の者を押しやって清吉に突き当たり、白墨はくぼくきれを投げ付けたり
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
こうすれば、言葉と白墨はくぼくの線とによって、大きさや角度や三角函数などの概念を注ぎ込むよりも遥かに早く確実に、おまけに面白くこれらの数学的関係を呑み込ませる事が出来る。
アインシュタインの教育観 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
が、突然ふり返ると、さもがっかりしたように白墨はくぼくかけほうり出した。
寒さ (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
何の返事へんじも聞えません。黒板こくばんから白墨はくぼくこなのような、くらつめたいきりつぶが、そこら一面いちめんおどりまわり、あたりが俄にシインとして、陰気いんきに陰気になりました。
種山ヶ原 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
白墨はくぼくっている子供こどもたちは、めいめいもんうえへ、またあちらのへいうえへ、まるをきましたが、白墨はくぼくっていない子供こどもたちは、ぬかるみのどろんこのなかぼうれて
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)
室内の様子は、前と同じで室内には例の赤色灯せきしょくとういていた。ただ、顔子狗のたおれていたところには、白墨はくぼく人体じんたいと首の形が描いてあることが、特筆すべき変り方であった。
鬼仏洞事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
山嵐は「おい君どこに宿とまってるか、山城屋か、うん、今に行って相談する」と云い残して白墨はくぼくを持って教場へ出て行った。主任の癖に向うから来て相談するなんて不見識な男だ。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
白墨はくぼくで、大きな「6」の字が書きなぐってあったではありませんか。
少年探偵団 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
その時先生が、むち白墨はくぼくや地図を持って入って来られたもんですから、みんなはにわかにしずかになって立ち、源吉ももう一遍いっぺんこっちをふりむいてから、席のそばに立ちました。
鳥をとるやなぎ (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
三ちゃんは、ポケットから、白墨はくぼくして、へいおおきなまるをきました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)