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かんしょう
ふりがな文庫
“
癇性
(
かんしょう
)” の例文
五十がらみの貧相な男で、
癇性
(
かんしょう
)
というのだろうか、首が少し左へ曲っていて、早くちに話しながら、その首を絶えず振る癖があった。
さぶ
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「驚いたぜ、親分。この家にはどんな
癇性
(
かんしょう
)
の人間が住んでいるか知らないが、雨戸の上の欄間まで
嘗
(
な
)
めたように拭き込んであるぜ」
銭形平次捕物控:182 尼が紅
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
ことに、あの
癇性
(
かんしょう
)
な清盛が、まだ二ツか三ツころのとき、乳くびに
咬
(
か
)
みついた歯のあとが、いまでも白ッぽいあとになって残っていた。
新・平家物語:02 ちげぐさの巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「だまんなさい!……」と
癇性
(
かんしょう
)
らしい声でカチェリーナはどなりつけた。「なぜはだしでいるか、自分で知っているくせに」
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
相変らず、長火鉢の前、婆やに、
燗
(
かん
)
をつけさせて、
猪口
(
ちょく
)
を口にしながら、
癇性
(
かんしょう
)
らしく、じれった巻きを、かんざしで、ぐいぐい掻きなぞして
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
▼ もっと見る
この姉は
喘息持
(
ぜんそくもち
)
であった。年が年中ぜえぜえいっていた。それでも生れ付が非常な
癇性
(
かんしょう
)
なので、よほど苦しくないと決して
凝
(
じっ
)
としていなかった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
貴娘は、先生のように
癇性
(
かんしょう
)
で、寒の
中
(
うち
)
も、井戸端へ持出して、ざあざあ水を使うんだから、こうやって洗うのにも心持は
可
(
い
)
いけれども、その代り手を
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
乳液でまんべんなく手の甲を
叩
(
たた
)
いておくだけで、爪は
癇性
(
かんしょう
)
なほど短く
剪
(
き
)
って
羅紗
(
らしゃ
)
の
裂
(
きれ
)
で
磨
(
みが
)
いて置く。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
平生
癇性
(
かんしょう
)
に爪をきる私にはとろうにも爪がない。で、申訳ばかりけずっていれる。蒼白く硬直して窮屈な棺のなかに合掌してる死骸をふとみればやっぱり妹のような気もする。
妹の死
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
何と答えてよいかわからぬ音枝に、女医さんはぐっと
癇性
(
かんしょう
)
にまゆをよせながら
雑居家族
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
いつたい彼女は
癇性
(
かんしょう
)
のせゐか、二十六と云ふ
歳
(
とし
)
のわりには
眼
(
め
)
ざとい方で、下女奉公をしてゐた時代から、どうかすると寝られない癖があつたものだが、今度も此の二階に引き移つてから
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
(一たいこの辺は泉の多い地方である)犬は耳を
癇性
(
かんしょう
)
らしく動かして二、三間ひきかえして、再び地面を嗅ぐや、今度は左の方へ折れて歩み出した。思ったよりもこの林の深いのに少しおどろいた。
西班牙犬の家:(夢見心地になることの好きな人々の為めの短篇)
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
癇性
(
かんしょう
)
の朋輩が見るに見兼ねて時々
夏すがた
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
癇性
(
かんしょう
)
というのだろうか、いつも赤い顔をして怒りっぽく、いちにちじゅうどこかでどなり声が聞えているというふうであった。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
界隈によく姿を見せる、いつも
藍
(
あい
)
みじんを着て、銀鎖の守りかけを、胸にのぞかせているような、
癇性
(
かんしょう
)
らしい若者——
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
「先生は
癇性
(
かんしょう
)
ですね」とかつて奥さんに告げた時、奥さんは「でも着物などは、それほど気にしないようですよ」
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
「町内の湯屋へ行きました。もう帰る頃ですが——兄さんは
癇性
(
かんしょう
)
で、夜の湯へは入れない人ですから」
銭形平次捕物控:102 金蔵の行方
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
北の
遣戸
(
やりど
)
を
閉
(
し
)
め、南の
簾
(
す
)
だけを
掲
(
かか
)
げた所にすぐ少年の声が聞かれた。しかしそれは、きイんと
癇性
(
かんしょう
)
をおびた駄々ッ子声で、
双六
(
すごろく
)
の駒をくずす音と
一
(
いっ
)
しょに聞えたのである。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
何しろ、これがたった一つ思い出の中に残っておるだけで、ほかのものは何もかも消し飛んでしまったんですからなあ! さよう、あれは
癇性
(
かんしょう
)
で、気位が高くて、負け嫌いな女ですよ。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
いったい彼女は
癇性
(
かんしょう
)
のせいか、二十六と云う
歳
(
とし
)
のわりには眼ざとい方で、下女奉公をしていた時代から、どうかすると寝られない癖があったものだが、今度もこの二階に引き移ってから
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「おらあ
癇性
(
かんしょう
)
で人に体を触らせたことがねえ、まして女なんぞに来られて堪るものか、江戸の大名なんてみんなこうするのか」
若殿女難記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「三文字屋のお店は南新堀だが、大旦那は
癇性
(
かんしょう
)
で多勢人のいるところでは寝られないと言って、毎晩
亥刻
(
よつ
)
(十時)になると、霊岸島の隠居家へ引揚げて休みなさるんで」
銭形平次捕物控:105 刑場の花嫁
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
私
(
わっち
)
ゃ
癇性
(
かんしょう
)
でね、どうも、こうやって、
逆剃
(
さかずり
)
をかけて、一本一本
髭
(
ひげ
)
の穴を掘らなくっちゃ、気が済まねえんだから、——なあに
今時
(
いまどき
)
の職人なあ、
剃
(
す
)
るんじゃねえ、
撫
(
な
)
でるんだ。
草枕
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
下町語では、そういう癖を
癇性
(
かんしょう
)
と、よぶ。私にも、それがあるようだ。いろいろあるが、外出のときは、たばこ以外、持つ物一切が嫌いである。手帖はもちろん、ハンケチさえも持ちたくない。
押入れ随筆
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それでも彼は背中の皮を根気よく撫でゝやりながら、少し心を落ち着けて此の部屋の中を眺めてみると、あの
几帳面
(
きちょうめん
)
で
癇性
(
かんしょう
)
な品子の遣り方が、ほんの些細な
端々
(
はしばし
)
にもよく現はれてゐるやうに感じた。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「堪忍してちょうだい」おみやが夜具の中からそう囁いた、「兄は
癇性
(
かんしょう
)
で、人が同じ部屋にいると眠れないんですって、迷惑でしょうけれどがまんして下さいね」
樅ノ木は残った:01 第一部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
其所
(
そこ
)
へ彼女の
癇性
(
かんしょう
)
が手伝った。彼女はどんなに
気息苦
(
いきぐる
)
しくっても、いくら
他
(
ひと
)
から忠告されても、どうしても
居
(
い
)
ながら用を足そうといわなかった。
這
(
は
)
うようにしてでも
厠
(
かわや
)
まで行った。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
五十がらみの恐ろしい
金棒曳
(
かなぼうひき
)
、そのうえ
癇性
(
かんしょう
)
で
眼敏
(
めざと
)
いのを自慢にしている女ですから、この
女主人
(
おんなあるじ
)
に知れないように、二階から脱け出すことは、猫のような身軽さで、物干から飛降りない限りは
銭形平次捕物控:067 欄干の死骸
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それでも彼は背中の皮を根気よく撫でてやりながら、少し心を落ち着けてこの部屋の中を
眺
(
なが
)
めてみると、あの
几帳面
(
きちょうめん
)
で
癇性
(
かんしょう
)
な品子の
遣
(
や
)
り方が、ほんの
些細
(
ささい
)
な
端々
(
はしばし
)
にもよく現われているように感じた。
猫と庄造と二人のおんな
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
頬骨の高い眉の厚い、謹厳そのものといった顔だちだが、
癇性
(
かんしょう
)
なのか片頬だけ時どき
微
(
かす
)
かに
痙攣
(
ひきつ
)
るのがみえた。話し終って袱紗包を差出すと、相手はそれに眼も呉れないで
鄭重
(
ていちょう
)
に頭を下げた。
金五十両
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「
可笑
(
おか
)
しくって笑えもしないよ」梅八は
癇性
(
かんしょう
)
にきせるで
莨箱
(
たばこばご
)
を引寄せた
新潮記
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
“癇性”の意味
《名詞》
神経質で怒りやすい性質。
異常な潔癖症であること。
(出典:Wiktionary)
癇
漢検1級
部首:⽧
17画
性
常用漢字
小5
部首:⼼
8画
“癇”で始まる語句
癇癪
癇
癇癖
癇高
癇癪持
癇癪玉
癇走
癇持
癇癪筋
癇症