珍味ちんみ)” の例文
「いや、博士。本日は、わが醤主席の密命を帯びてまいりましたもので、きっと博士のお気に入る珍味ちんみをもってまいりました」
煮たのも来る。舞茸まいたけ味噌汁みそしるが来る。焚き立ての熱飯あつめしに、此山水の珍味ちんみえて、関翁以下当年五歳の鶴子まで、健啖けんたん思わず数碗すうわんかさねる。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
一層いつそうあぢかろとり丸燒まるやきなどはなか/\の御馳走ごちさうで、いまわたくしには、世界せかい第一だいいちのホテルで、世界せかい第一だいいち珍味ちんみきようせられたよりも百倍ひやくばいうれしくかんじた。
これは鹽燒しほやき、てんぷら、つけ、などになり、鑵詰かんづめにあきた登山者とざんしやにとつてなによりの珍味ちんみです。
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
そも/\このけづりといふ物を珍味ちんみとする事古書こしよ散見さんけんせしその中に、定家卿の明月記に曰
という顔して、珍味ちんみ佳酒かしゅのまえに、泰然たいぜんとしているのは辛いだろう。武士は食わねどというが——また、これもきょうの和睦わぼくの交渉に強味をもつひとつの兵法とはいいながら。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
十一ぐわつの二十八にち旦那だんなさまお誕生日たんぜうびなりければ、年毎としごと友達ともだち方々かた/″\まねまいらせて、周旋しうせんはそんじよしやうつくしきをりぬき、珍味ちんみ佳肴かこううちとけの大愉快おほゆくわいつくさせたまへば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
めに一人も中毒ちうどくひしものなし、此他めしの如き如何なる下等米といへども如何なる塵芥じんかいこんずると雖も、其味のなる山海の珍味ちんみも及ばざるなり、余の小食家もつねに一回凡そ四合をしよくしたり
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
美食家のせい桓公かんこうが己のいまだ味わったことのない珍味ちんみを求めた時、厨宰ちゅうさい易牙えきがは己が息子むすこ蒸焼むしやきにしてこれをすすめた。十六さいの少年、しんの始皇帝は父が死んだその晩に、父の愛妾あいしょうを三度おそうた。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
「いや、うでない、あれは珍味ちんみぢやぞ。」
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
そも/\このけづりといふ物を珍味ちんみとする事古書こしよ散見さんけんせしその中に、定家卿の明月記に曰