猶豫ためら)” の例文
新字:猶予
何の猶豫ためらふさまもなく、我側に歩み寄りて我胸を抱き、めづらしきかな、アントニオ、われ等の相別れし夕は賑やかなりき、われ等は祝砲をさへ放ちたり
……雨風あめかぜ猶豫ためらつて、いざと間際まぎはにも、卑怯ひけふに、さて發程たたうか、めようかで、七時しちじ急行きふかう時期じきごし、九時くじにもふか、ふまいか。
大阪まで (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
(左右より人々に縋られて、五郎三郎もすこし猶豫ためらふ。唄の聲、遠くきこゆ。)
箕輪の心中 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
よめ先手せんてゆ。いはく、ひがしの五からはじめてみなみの九のいしと、しうと言下げんかおうじて、ひがしの五とみなみの十二と、やゝありてよめこゑ西にしの八ツからみなみの十へ、しうといさゝか猶豫ためらはず、西にしの九とみなみの十へ。
唐模様 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
のりあたらしい浴衣ゆかた着換きかへて——くだん胴震どうぶるひをしながら——廊下らうかた。が、する/\とむかうへ、帳場ちやうばはうへ、はるかけて女中ぢよちうながら、かれ欄干てすりつて猶豫ためらつたのである。
魔法罎 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
すで獻立こんだてしてちたればたゞちに膳部ぜんぶ御前ごぜんさゝげつ。「いま一膳いちぜんはいかゞつかまつらむ」とうかゞへば、幼君えうくん「さればなりそのぜんかごなかつかはせ」との御意ぎよい役人やくにんいぶかしきことかなと御顏おんかほみまもりて猶豫ためらへり。
十万石 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
「へい。」と煮切にえきらない返事へんじをして、すこ退すさつて、猶豫ためらひながら
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
待受まちうけたやうに、猶豫ためらはずこたへた……
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)