物指ものさし)” の例文
うでしやう」とつたぎり物指ものさしさきを、とまつたところいたなり、わたつたそらひとしきりながつた。宗助そうすけ細君さいくんかほずに
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
ノルムはその語原ごげんを調べると大工だいくの使用する物指ものさしすなわち定規じょうぎである。この定規にかなったものがノルムてきすなわち英語にいうノーマル(normal)である。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
美か醜かで判じるような物指ものさしに、どれだけの力があろう。そんなもので計り得るものを、ゆめ美しいと呼んではならない。真の美しさとは「畢竟浄ひっきょうじょう」なのである。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
お前が外部的に教え込まれている理想の物指ものさしにあてはめて見ると、私はいかにも物足らない存在として映るだろう。私はキャリバンではない代りにエーリヤルでもない。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
つまりそれは仮りに定めた「物指ものさし」というものとの相対的な心覚えにしか過ぎません、僕たちは、宇宙というものを宏大無辺ということと同義語のように使って怪しみませんが
宇宙爆撃 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
「で、ございますかな。」とようよう膝去いざり出して、遠くから、背を円くして伸上って、腕を出して、巻莨まきたばこに火をけたが、お蔦が物指ものさしを当てた襦袢じゅばんの袖が見えたので、気にして、慌てて、引込める。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
物指ものさしを頬にあてて考へてる。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
物指ものさしせなかくことも日短ひみじか
五百句 (新字旧仮名) / 高浜虚子(著)
細君は立て切った障子を半分ばかり開けて、敷居の外へ長い物指ものさしを出して、その先で近の字を縁側へ書いて見せて
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
うちへ帰ると細君は奥の六畳に手枕てまくらをしたなりていた。健三はそのそばに散らばっている赤い片端きれはしだの物指ものさしだの針箱だのを見て、またかという顔をした。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細君さいくんつた障子しやうじ半分はんぶんばかりけて、敷居しきゐそとなが物指ものさしして、其先そのさききん縁側えんがはいてせて
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
あたかも物指ものさしで反物の寸法さえ計れば、縞柄しまがらだの地質だのは、まるで問題にならないといった風に。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
腹這はらばい弥生やよいの姿、寝ながらにして天下の春を領す。物指ものさしの先でしきりに敷居をたたいている。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
次には平たくして紙の上へ横に置くと定規じょうぎの用をする。またの裏には度盛どもりがしてあるから物指ものさしの代用も出来る。こちらの表にはヤスリが付いているこれで爪をりまさあ。ようがすか。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼女は津田が病院へ入る時、彼に入用いりようの手荷物をまとめるため、二三日前にさんちまえすでにそこをさがしたのである。彼女は残された封筒だの、物指ものさしだの、会費の受取だのを見て、それをまた一々鄭寧ていねいそろえた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
細君は右の手で物指ものさしを持ったまま夫の顔を下から見上げた。
道草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
現にせんだってなどは物指ものさしで尻ぺたをひどくたたかれた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)