活計たつき)” の例文
小路を行交ゆきか市人いちびともすべてわが知れりしよりは著しく足早になりぬ。活計たつきにせわしきにや、夜ごとに集う客の数も思いくらぶればいと少し。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その頃は浪人や無宿者の取締りがやかましく、足腰の達者な男は、何か活計たつきの立つような名目だけでも持っていなければならなかったのです。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
武蔵の厚意に少年は大いに喜び、「自分には養うべき老いた両親があるゆえ、修行の望みは充分あるけれども、現在いま活計たつきを棄てるわけにはゆかぬ」
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
取つて親子が活計たつきとなすも今茲ことし丁度ちやうど三年越し他に樂みもあらざれど娘もいと孝行かうかうにして呉る故それのみが此上このうへもなき身のよろこび是も今茲ことしはモウ十七婿むこ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ないないかような大難にうて、天主でうす様の御救おたすけにあずかり、天国はらいそうへ生れて、安楽な活計たつきに、ひもじい目にもわず、瓔珞ようらくをさげていたいと願うていたところじゃ、早う打ち殺して
切支丹転び (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
勿論それだけでは活計たつきが立ちそうもないのですが、いくらか貯えのある人とみえて、無事に七、八年を送っていました。お父さんは寝酒の一合ぐらいを毎晩欠かさずに飲んでいました。
怪談一夜草紙 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
構わずに此処こゝへ来て一盃いっぱい……それから松蔭もこゝへ来て……えゝ、これは貴公も知ってる通り、渡邊織江の忰祖五郎で、あれは春部梅三郎じゃ、不調法があってお暇になり、浪人の活計たつきに迫り
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
鑑定めきゝに來たりし樓の主が誘ひにまかせ、此地に活計たつきもとむとて親子三人みたりが旅衣、たち出しは此譯、それより奧は何なれや、今は寮のあづかりをして母は遊女の仕立物、父は小格子こがうしの書記に成りぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
陽気な楽しい日毎々々の活計たつきのための。
年寄は恩を忘れずうちへ引取って介抱をしてはいるけれども、活計たつきに窮するのはいうまでもない上に、耳が遠くッて用が足りず
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その頃は浪人や無宿者の取締りがやかましく、足腰の達者な男は、何か活計たつきの立つやうな名目だけでも持つてゐなければならなかつたのです。
銭形平次捕物控:124 唖娘 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
鑑定めきゝたりしろうあるじさそひにまかせ、此地このち活計たつきもとむとて親子おやこ三人みたり旅衣たびごろも、たちいでしは此譯このわけ、それよりおくなになれや、いまりようのあづかりをしてはゝ遊女ゆうぢよ仕立物したてものちゝ小格子こがうし書記しよきりぬ
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
だって、今だから話すんだけれど、その蚊帳かやなしで、蚊が居るッていう始末でしょう。無いものは活計たつきしろという訳で。
女客 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鑑定めききに来たりし楼の主が誘ひにまかせ、この地に活計たつきもとむとて親子三人みたりが旅衣、たちいでしはこの訳、それより奥は何なれや、今は寮のあづかりをして母は遊女の仕立物、父は小格子の書記に成りぬ
たけくらべ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
日当ひあたりの背戸を横手に取って、次第まばら藁屋わらやがある、中に半農——このかたすなどって活計たつきとするものは、三百人を越すと聞くから、あるいは半漁師——少しばかり商いもする——藁屋草履は
小春の狐 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そのはじめ江戸から住替えて来た有名な芸妓げいしゃだった、のみならず、これを便たよって同じ仙台の土地へ後から出て来た母の妹夫婦も、また甚だ不遇で、年もかず夫がなくなったので活計たつきを失うと
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
されど、小児等こどもら不便ふびんなり、活計たつきすべを教うるなりとて、すなわち餡の製法を伝えつ。今はこれまでぞと云うままに、くびを入れてまた差覗くや、たちまち、黒雲をき小さくなりて空高く舞上る。
一景話題 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もと異様なる節を附し両手をりて躍りながら、数年来金沢市内三百余町に飴を売りつつ往来して、十万の人一般に、よくその面をみしられたるが、征清せいしんのことありしより、渠は活計たつきの趣向を変えつ。
化銀杏 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)