泣聲なきごゑ)” の例文
新字:泣声
こゝへつたお救小屋すくひごやへ、やみのは、わあツと泣聲なきごゑ、たすけて——と悲鳴ひめいが、そこからきこえて、幽靈いうれいあらはれる。
間引菜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
さうしてなか豫期よきしてゐる赤兒あかご泣聲なきごゑきこえないと、かへつてなにかのへんでもおこつたらしくかんじて、いそいでうちんで、自分じぶん自分じぶん粗忽そこつづることがあつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
配分はいぶんして侠客をとこづくで呑込のみこんで居てやつたのに金を何で貴殿おまへみついだなどとは不埓ふとい云樣いひやうだと泣聲なきごゑを出して云ひつのるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
たもととらへて『あんまりじやアありませんか、何卒どうか返却かへしていたゞきたいもんです』と泣聲なきごゑになつてうつたへた。
石清虚 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
畜生ちくしやう! け! さツさとけ!』とかれ玄關迄げんくわんまで駈出かけだして、泣聲なきごゑげて怒鳴どなる。『畜生ちくしやう!』
六号室 (旧字旧仮名) / アントン・チェーホフ(著)
か包み申さん只今惣内が申上しに相違御座なくかれが藥を調とゝのへに參りし跡にて女の泣聲なきごゑ致すにより里が勾引かどはかされ候事と存じ惡者とたゝかひ居候中惣内立戻たちもどり來兩人にて其者を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
おくではしきり嬰兒あかご泣聲なきごゑがした。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
おとし忽ち産後さんごあがり是も其夜の明方あけがた相果あひはてければあとのこりしお三婆は兩人ふたり死骸しがいに取付天をあふぎ地に泣悲なきかなしむより外なきは見るもあはれの次第なり近邊きんぺんの者どもばゝ泣聲なきごゑ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)