きたね)” の例文
きたねえな! ってわっしあ本当にうっかり。それが何です、山河内やまこうちという華族の奥方だったんですって、華族だって汚えんですもの。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「どいつも、此奴も、ろくでもねえくずばかり。何だって、俺あ、あんな狐鼠狐鼠こそこそ野郎ときたねえ、血などめ合って、義兄弟になったんだろう」
雲霧閻魔帳 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
カダルマゴにもよめにも皆死なれデ、村役場ガラコメコだのジエンコだのもらて、ムマヤよりもマダきたね小舍コヤコ這入ハエテセ、乞食ホエドして暮らすマナグデ來るデバ。
地方主義篇:(散文詩) (旧字旧仮名) / 福士幸次郎(著)
お立派なお侍さんがんなきたねえ処へお出でなすったくれえだから、どうか此のあまを可愛がって下せえまし、折角此処こゝまで連れて逃げて来たものを、若い内には有りうちの事だ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
(意地きたねえことを考えるな)
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
やあきたねどぶだ。おそろしい石灰いしばひだ。ひどみちだ。三階さんがいがあるぜ、浴衣ゆかたばかしの土用干どようぼしか、夜具やぐうら眞赤まつかな、なん棧橋さんばし突立つツたつてら。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
馬鹿ばかだな、苟且かりにも主人しゆじんが呼んだら、なに御用ごようでもりますかと手を突いてふもんだ、チヨツ(舌打したうち)大きな体躯なりで、きたねえ手のあかを手のひらでぐる/\んで出せばくらゐ手柄てがらになる
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
闘鶏師とりしを泣かせて、金を蓄めた屋敷だ。オオきたねえ、オオ汚え」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
声を出して言ったのか、きたねえなんて、たむしめさせられはしまいし、肌を脱いで医者に見せた処を背後うしろから、汚え、なんていう奴がありますかい、しかも華族だってな、山河内……伯爵だ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
ちゃんの脛ばかりは咬っていねえ、是でもお客がえら有れば種々いろんな手伝をして、洗足すゝぎ持ってこ、草鞋わらじを脱がして、きたねえ物を手に受けて、湯うわかして脊中を流してやったり、みんなうちの為と思ってしているだ
菊模様皿山奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
「しかしたむしきたねえといったのが、柳屋の気に入ったというでもなかろう。」
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこら鼠色のきたねえ泡だらけになって、どんみりと流れたわ、水とハイ摺々すれすれでの——その方は岸へ上って、腰までずぶ濡れのきものを絞るとって、帽子を脱いで仰向あおむけにして、その中さ、入れさしった
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「気扱いがいる奴じゃねえ、きたね婦人おんなよ。」
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)