毛虫けむし)” の例文
旧字:毛蟲
われ毛虫けむしたりし時、みにくかりき。吾、てふとなりてへばひとうつくしとむ。人の美しと云ふ吾は、そのかみの醜かりし毛虫ぞや。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
難儀なんぎさも、へびも、毛虫けむしも、とりたまごも、くさいきれも、しるしてあるはずはないのぢやから、薩張さツぱりたゝんでふところれて、うむとちゝした念仏ねんぶつとなんで立直たちなほつたはいが
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
こう考えて来ると、閑山いても立ってもいられないのでふだんは毛虫けむしのようにきらっている岡っ引きのところへ、鎧櫃の取りもどし方を頼みに来たのだ。文次は黙って聞いている。
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
裏庭には薔薇ばらが沢山ある。もっとも花はまだ一輪もない。彼はそこを歩きながら、みちへさし出た薔薇の枝に毛虫けむしを一匹発見した。と思うとまた一匹、隣の葉の上にもっているのがあった。
保吉の手帳から (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
そして、すぐあなのまえあおのついているえだに、自分じぶんたちのきな、いつも母親ははおやが、どこか遠方えんぽうからってきてくれるのとおなじい毛虫けむしが、うようよとしてうごいているのをました。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)
ゑて毛虫けむし嗟歎なげかひのほろほろてうよ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
毛虫けむしがすきでたべました。
どんたく:絵入り小唄集 (新字旧仮名) / 竹久夢二(著)
わたしがものをいて、返事へんじ躊躇ちうちよをなすつたのは此時このときばかりで、また、それはいぬしゝだとか、おほかみだとか、きつねだとか、頬白ほゝじろだとか、山雀やまがらだとか、鮟鱇あんかうだとかさばだとか、うぢだとか、毛虫けむしだとか、くさだとか
化鳥 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こんどのは、なかなか安心あんしん場所ばしょじゃありませんか。それに、のまわりのえだには、毛虫けむしがたくさんついていますから、そんなにとおくまでいってえさをおさがしなさらなくてもいいかとおもいます。
南方物語 (新字新仮名) / 小川未明(著)