比叡山ひえいざん)” の例文
ここは近江おうみの国、比叡山ひえいざんのふもと、坂本さかもとで、日吉ひよしの森からそびえ立った五重塔ごじゅうのとうのてッぺん——そこにみんなのひとみがあつまっているのだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
換言すれば、「この上もない真実なさとり」という意味が、阿耨多羅三藐三菩提ということです。あの比叡山ひえいざんをお開きになった伝教でんぎょう大師は
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
そのうちに比叡山ひえいざん西塔さいとう武蔵坊むさしぼうというおてらぼうさんがくなりますと、弁慶べんけい勝手かってにそこにはいりこんで、西塔さいとう武蔵坊弁慶むさしぼうべんけいのりました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これは近江の國の比叡山ひえいざんにおいでになり、またカヅノの松の尾においでになる鏑矢かぶらやをお持ちになつている神樣であります。
その月の上旬に上方かみがたには騒動が起こったとか、新帝が比叡山ひえいざんへ行幸の途中鳳輦ほうれんを奪い奉ったものがあらわれたとかのたぐいだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
平将門たいらのまさかど比叡山ひえいざんから美しい京都の町を眺めて、「ええッあの中にあばれ込んでできるだけしつこく楽しんでやりたい」
愛と認識との出発 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
比叡山ひえいざん延暦寺えんりゃくじの山法師、興福寺の奈良法師、所謂いわゆる僧兵の兇暴きょうぼうぶりは周知のとおりであり、事毎に争乱の渦中かちゅうにあった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
大正十四年八月に、比叡山ひえいざんのアララギ安居会あんごくわいに出席して、それから先輩、友人五人の同行どうぎやう高野山かうやさんにのぼつた。
念珠集 (新字旧仮名) / 斎藤茂吉(著)
と見れば、比良ヶ岳、比叡山ひえいざんの上に、真黒な雲がかぶさり、さしも晴れやかに光っていた琵琶湖の湖面が、淡墨うすずみを流したようにくろずんできたのを認めました。
大菩薩峠:35 胆吹の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
比叡山ひえいざん延暦寺えんりやくじの、今、私の坐つてゐる宿院の二階の座敷の東の窓の机につて遠く眼を放つてゐると、老杉蓊鬱おううつたる尾峰の彼方に琵琶湖の水が古鏡の表の如く
湖光島影:琵琶湖めぐり (旧字旧仮名) / 近松秋江(著)
 初雪が降ることは降つたが余り少量故何処どこも降るといふわけには行かず、ただ比叡山ひえいざんの上ばかりに降つたといふことなり。配り足らぬとは初雪を擬人法にしてさういふなり。
俳諧大要 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
有斐斎剳記ゆうひさいさつき』に対馬つしま某という物産学者、薬草を採りに比叡山ひえいざんの奥に入って、たまたま谷を隔てて下の方に、一人の小児の岩から飛び降りてはまたじ登って遊んでいるのを見た。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三河みかは鳳來寺山ほうらいじさん高野山こうやさん比叡山ひえいざん三箇所さんかしよだけにゐる靈鳥れいちようで、けつして姿すがたせず、こゑきこえるだけだといひますが、もとは𤍠帶ねつたいとりで、とほわたつてくるのですから以上いじようみつつのやまばかりでなく
森林と樹木と動物 (旧字旧仮名) / 本多静六(著)
昔、比叡山ひえいざんの或る上人のもとに召使われている中間僧ちゅうげんそうがあった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
ふたりはこれから、比叡山ひえいざんをこえ、八瀬やせから鞍馬くらまをさして、みねづたいにいそぐのらしい。いうまでもなく果心居士かしんこじのすまいをたずねるためだ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それから比叡山ひえいざんに帰る道すがら、私はまじめに考えてみずにはいられなかった。私はほんとうに恋を知らないのであろうか。私はそうとは言えなかった。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
早く当時学問の権威比叡山ひえいざんに送って本格の修業をさせなければならぬと心仕度をしていた。
法然行伝 (新字新仮名) / 中里介山(著)
そのころ京都きょうときた比叡山ひえいざんに、弁慶べんけいというつよぼうさんがありました。
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
雪の降る夜、比叡山ひえいざんから、三里半ある六角堂まで百夜も夜参りをして帰り帰りした事もありました。しかし一つの善根を積めば、十の悪業あくごうがふえて来ました。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)
(間)私が比叡山ひえいざんで一生懸命修行しているころであった。慈鎮和尚じちんかしょう様の御名代ごみょうだいで宮中に参内さんだいして天皇の御前で和歌をませられた。その時の題が恋というのだよ。
出家とその弟子 (新字新仮名) / 倉田百三(著)