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とう
ふりがな文庫
“
榻
(
とう
)” の例文
室内にいれば、その
榻
(
とう
)
のそばに這っている。庭に出れば、その足もとに這って来る。外へ出れば、やはりそのあとから付いてくる。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その男の押すボタンに連れて、珠が鏡に変わるのである。部屋の広さ三十畳敷ぐらいそこに幾個か円卓があり、円卓の
周囲
(
まわり
)
に
榻
(
とう
)
がある。
前記天満焼
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
緑樹のかげに
榻
(
とう
)
(こしかけ)を寄せて、麥酒の満をひく時、卓上に香魚の
塩焙
(
えんはい
)
があったなら涼風おのずから
涎
(
よだれ
)
の舌に湧くを覚えるであろう。
香魚の讃
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
淫
(
みだ
)
らな
胡弓
(
こきゅう
)
の音を聞きつけて、張飛がその室をうかがうと、果たして正面の
榻
(
とう
)
に美人を擁して酔いしれている高官がある。まぎれもない督郵だ。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
府君松下の
榻
(
とう
)
に倚り頻に眼鏡を拭いつつ
詩韻含英
(
しいんがんえい
)
を開閉せらる。余府君の眼鏡を用いられたるを見し事なかりしかば傍より其の故を問う。先君笑ってこは老眼鏡なり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
孝孺
喪服
(
そうふく
)
して入り、
慟哭
(
どうこく
)
して
悲
(
かなし
)
み、声
殿陛
(
でんへい
)
に徹す。帝みずから
榻
(
とう
)
を
降
(
くだ
)
りて
労
(
ねぎ
)
らいて曰く、先生労苦する
勿
(
なか
)
れ。我
周公
(
しゅうこう
)
の
成王
(
せいおう
)
を
輔
(
たす
)
けしに
法
(
のっと
)
らんと欲するのみと。孝孺曰く、成王いずくにか
在
(
あ
)
ると。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
城中には、
青藺
(
あおいぐさ
)
のしきもの、白き
榻
(
とう
)
あり
ウスナの家
(新字新仮名)
/
フィオナ・マクラウド
(著)
庭に
榻
(
とう
)
をすゑ、これに彼をかけさせた。
イノチガケ:――ヨワン・シローテの殉教――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
(李は
榻
(
とう
)
に腰をおろして、再び煙草を喫んでいる。砧の音。やがて下のかたより高田圭吉、仕事着のままにて走り出で、窓より内を覗く。)
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、ほっと、一息つくと共に、綿のように疲れた体を、一室の
榻
(
とう
)
に倚せて、居眠るともなく、うつらうつらとしていた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その主馬之進の妻の
松女
(
まつじょ
)
との顔で、その三人は
榻
(
とう
)
に腰かけ、卓の上の蝋燭の燈の下で、渦のように廻っている淀屋の独楽を、睨むようにして見守っていた。
仇討姉妹笠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
庚申
(
こうしん
)
の年
孟夏
(
もうか
)
居を
麻布
(
あざぶ
)
に移す。ペンキ塗の二階家なり。因って
偏奇館
(
へんきかん
)
と名づく。内に障子襖なく代うるに扉を以てし窓に雨戸を用いず
硝子
(
ガラス
)
を張り床に畳を敷かず
榻
(
とう
)
を置く。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(二人はそっと
榻
(
とう
)
を片寄せ、更に卓を片寄せる。それから壁の隅にある鋤と鍬のたぐいを持ち来りて、卓の下と思われるあたりを掘り始める。)
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ところが、一閣の室に通されて見ると、この寒いのに、暖炉の備えもなく
榻
(
とう
)
の上に
裀
(
しとね
)
も敷いてなかった。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
わたしは
斑竹
(
はんちく
)
の
榻
(
とう
)
に腰をおろし燭をかざして四方の壁に掛けてある
聯
(
れん
)
や
書幅
(
しょふく
)
の詩を眺めた。
雨瀟瀟
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
(母と娘は上のかたの壁の前に種々の供物をして、月を祭る準備をする。李は疲れたように、
榻
(
とう
)
に腰をおろしている。)
青蛙神
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
かつての
名刹
(
めいさつ
)
、二龍山の
宝珠寺
(
ほうじゅじ
)
も、いまは賊の殿堂と化して、千僧の
諷誦
(
ふうしょう
)
や
梵鐘
(
ぼんしょう
)
の声もなく、代りに、
豹
(
ひょう
)
の皮をしいた
榻
(
とう
)
の上に、赤鬼のごとき大男が昼寝していた。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
さらに奥の間へ案内されると、広い座敷のなかにはただひとつの
榻
(
とう
)
を据えて、ひとりの
偉丈夫
(
いじょうふ
)
が帽もかぶらず、靴も穿かずに、長い髪を垂れて休息していた。
中国怪奇小説集:15 池北偶談(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と、横たわっていた美しい
榻
(
とう
)
(細長い
床几
(
しょうぎ
)
)から身を起して、
冠
(
かんむり
)
の
纓
(
えい
)
(ひも)を、ちょっと正した。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お通し申すことが出来ません。ただ中堂に一つの
榻
(
とう
)
がありますから、それでよろしければお
寝
(
やす
)
みください
中国怪奇小説集:09 稽神録(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
人々が駈け寄ってきてみたときは、孔明は
袂
(
たもと
)
を以て自ら
面
(
おもて
)
をおおい、
榻
(
とう
)
の上にうっ伏していた。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
奥の寝室は
帷
(
とばり
)
も
衾
(
よぎ
)
も華麗をきわめたもので、一匹の年ふる大猿が石の
榻
(
とう
)
の上に横たわりながら
唸
(
うな
)
っていると、そのそばには
国色
(
こくしょく
)
ともいうべき美女三人が控えています。
中国怪奇小説集:14 剪灯新話(明)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「お手すきなら、ちょっと、この
苑廊
(
えんろう
)
の
榻
(
とう
)
(長椅子)までお出ましくださいませんか」
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
正面の高いところには、錦の冠をいただいて黄色い
袍
(
ほう
)
を着た男が酒に酔ったような顔をして、珠をちりばめた
榻
(
とう
)
に腰をかけていた。これが唐人の王様であろうと千枝松は推量した。
玉藻の前
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
董卓は、脂肪ぶとりの肥大な体を、相かわらず重そうに
揺
(
ゆ
)
るがして、
榻
(
とう
)
へよった。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
唐の
元和
(
げんな
)
年中、
許
(
きょ
)
州の
趙季和
(
ちょうきわ
)
という旅客が都へ行く途中、ここに
一宿
(
いっしゅく
)
した。趙よりも先に着いた客が六、七人、いずれも
榻
(
とう
)
に腰をかけていたので、あとから来た彼は一番奥の方の榻に就いた。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「——きゃっ」と、胡弓や琴をほうりだして
妓
(
おんな
)
たちは
榻
(
とう
)
の下へ逃げこんだ。
三国志:02 桃園の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
紇の妻は石の
榻
(
とう
)
の上に寝ていたが、畳をかさね、
茵
(
しとね
)
をかさねて、結構な食物がたくさんに列べてあった。たがいに眼を見合わせると、妻は急に手を振って、夫に早く立ち去れという意を示した。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
轅
(
ながえ
)
には、
鷺脚
(
さぎあし
)
の
榻
(
とう
)
を据え、前すだれの下には、
沓台
(
くつだい
)
を置く。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
榻
漢検1級
部首:⽊
14画
“榻”を含む語句
臥榻
脚榻
迎我譲榻去
榻背
榻子
石榻
陶榻
禅榻
牀榻
座榻
一榻
長榻
今日鬢絲禅榻畔
褥榻
茶煙禅榻
茶榻
円榻
脚榻釣
榻列
竹榻
...