服紗ふくさ)” の例文
「ほほほほ、お百度参りするのだもの、ごちそうばかりしちゃたまらないわ。お待ちなさいよ」言いつつ服紗ふくさ包みの小重を
小説 不如帰  (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
この人が、塩瀬の服紗ふくさに包んだ一管の横笛を袴腰に帯びていた。貸本屋の女房がのっけに、薦僧こもそうと間違えたのはこれらしい。……ばかりではない。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
人によってはもと服紗ふくさともいったものを、たれかが風呂敷などと名をかえたのだというが、この二つは同じ物ではない。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
うかゞへば女の化粧けしやうする動靜やうすなり何心なくのぞこめば年の頃は十八九の娘の容色きりやうすぐれ美麗うつくしきが服紗ふくさより一ツの金包かねつゝみを取出し中より四五りやうわけて紙に包み跡を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
今度は自分が手をくだす番になって、藤四郎はふところの十手の服紗ふくさを払った。御用と叫んで打ち込んで来る十手の下をくぐって、松蔵は店を駈け出した。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
当季たうきやうなものは誠に少なくなりましたがとつて、服紗ふくさ刀柄つかいてくんだよ、先方むかうけないやうに、此方こちらを向けて鋩子先ばうしさきまでた処でチヨンとさやをさ
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
実はこれを貴君あなたに始末して頂こうと思って持って参じましたといって風呂敷包ふろしきづつみを解かれると、中に絹の服紗ふくさに包んだものが米ならば一升五合もあろうかと思うほどのかさになっている。
其は翁が八十のいわいに出来た関牧場の画模様えもよう服紗ふくさと、命の洗濯、旅行日記、目ざまし草に一々うたおよび俳句はいく自署じしょしたものであった。両家族の者残らずにてゝ、各別かくべつに名前を書いてあった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
寂寞ひつそる。かはづこゑやむだを、なんと、そのは、はづみでころがりした服紗ふくさぎんなべに、れいりつゝ、れい常夏とこなつはなをうけようとした。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
お定の話によると、お駒はそれを水色縮緬ちりめん服紗ふくさにつつんで、自分の部屋の箪笥の抽斗ひきだしにしまって置いたのを、去年の暮の煤掃すすはきの時にうやうやしく持ち出して見せたことがある。
半七捕物帳:31 張子の虎 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
と成され印をすゑし一書を下しおかれ短刀は淺黄綾あさぎあやあふひ御紋ごもん染拔そめぬき服紗ふくさつゝみて下されたり。
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
かわいい服紗ふくさにちかい小風呂敷こふろしきというものがはじまったのである。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
けれども、塗柄を受けた服紗ふくさのようなものは、紗綾さやか、緞子どんすか、濃い紫をその細工ものに縫込んだ。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
卷上れば天一坊はあつたけからざる容體ようだいに着座す其出立には鼠色ねずみいろ琥珀こはく小袖こそでの上に顯紋紗けんもんしや十徳じつとくを着法眼袴はふげんはかま穿はきたり後の方には黒七子くろなゝこの小袖に同じ羽織茶宇ちやうはかま穿はき紫縮緬むらさきちりめん服紗ふくさにて小脇差こわきざし
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)