斥候せっこう)” の例文
既に自分の職務さえ、辛うじて務めたほどのものが、何の余裕があって、敵情を探るなんて、探偵や、斥候せっこうの職分が兼ねられます。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼の瞳は、まるで斥候せっこうに出された兵のように、冷たい光をたたえて周囲を見廻し、癖のある例の肩をひいて油断のない身構えをしている。
雲南守備兵 (新字新仮名) / 木村荘十(著)
「今しがた二俣ふたまた城へまいった物見(斥候せっこう)がかえり、二俣もついに落城、甲州こうしゅう勢はいっきにこの浜松はままつへおし寄せまいるとのことでござります」
死処 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
と、中村孫兵次、山内猪右衛門いえもんなどの一小隊が復命に来た。これも昨日の昼から出てようやくいま帰った斥候せっこう部隊である。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と兵太郎君が、五年生の喜六君きろくくんにいいました。喜六君は、からだが小さく、すばしこいので、いつも斥候せっこうになるのです。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
これほど真面目な重大な使命が、ほかにあるだろうか。国防の最前線に立つ将校斥候せっこうを、あえて君は不真面目というのか
太平洋魔城 (新字新仮名) / 海野十三(著)
両隊長はわずか二小隊の兵を以て軍艦を防げと云われて当惑したが、海岸へは斥候せっこうを出し、台場へは両隊から数人ずつ交代して守備に往くことにした。
堺事件 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
あらかじめ斥候せっこうの連中が皆、上方勢を十万、十四五万と評価して報告して来るうちに、黒田家の毛谷主水もんどだけが、敵は総勢一万八千に過ぎないと言う。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
中隊長は暫らく考え込んでいたらしかったが、五名の斥候せっこうを命じてから、すぐまた、全隊に「前進」を命じた。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
斥候せっこうに出た時、小高い丘の疎林そりんの間から下を眺めると、其処そこには白い砂原が遠く連なり、その中程あたりを鈍い刃物色をした冬の川がさむざむと流れている。
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
大豆だいずにはくちかきむしの成虫がうざうざするほど集まった。麦類には黒穂の、馬鈴薯ばれいしょにはべと病の徴候が見えた。あぶぶよとは自然の斥候せっこうのようにもやもやと飛び廻った。
カインの末裔 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
「なんでも斥候せっこうの報告では、敵の全艦隊は、順風を待って出動しようとして、今、港にいかりをおろしているそうですから、これを全部とっつかまえて御覧にいれましょう。」
ひづめで落葉を蹶散けちらす音、これは騎兵演習の斥候せっこうか、さなくば夫婦連れで遠乗りに出かけた外国人である。何事をか声高こわだかに話しながらゆく村の者のだみ声、それもいつしか、遠ざかりゆく。
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
そうして「もしかすると今度の斥候せっこう旅行で、リヤトニコフが戦死しはしまいか」
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
鉄砲玉てっぽうだまのロックと四本指の兄貴あにきのパイクのふたりが、海蛇うみへびの命令で斥候せっこうに出た、そしてきみらの洞穴を発見したのだ、洞からはチラチラと火がもれ、戸をあけしめするすがたを見たので
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
壮丁そうていという壮丁は続々国境に向いつつあった。出征する兵士の並木街を通るような光景が既に二日ばかりも続いた。はや独逸軍の斥候せっこうが東仏蘭西の境を侵したという報知しらせすら伝わっていた。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
数名の斥候せっこうが川上と川下から派出された。長羅は一人高く馬上に跨って対岸を見詰めていた。川には浅瀬が中央にただ一線流れていた。そうして、その浅瀬の両側には広い砂地が続いていた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
島を、大いそぎで一まわりしてきた、漁業長と小笠原おがさわらら、斥候せっこうの報告は
無人島に生きる十六人 (新字新仮名) / 須川邦彦(著)
出れば近所の子にせがまれてありったけの小銭こぜにをやっていたが、その無意味な贈物おくりものが不道徳な行為だと友人にいさめられて、ある日道を変えて宿へ逃げ帰るところを、斥候せっこうを放った子供達に包囲されて
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
敵情を探るためには斥候せっこうや、探偵たんていが苦心に苦心を重ねてからに、命がけで目的を達しやうとして、十に八、九は失敗しくじるのだ。
海城発電 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
先鋒の水野隊は、ひと足さきに城へついて、夜どおし、斥候せっこうを放ち、西軍の進路と情況を、手にとるように察していた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おい、上陸人の斥候せっこう報告があった。上には食堂のすばらしいのがあるぞう。酒も洋酒だが、なかなかうまいそうだあ。
浮かぶ飛行島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
私達の教練きょうれんの教官、万年少尉殿が危く落馬しかけた話や、行軍の途中民家の裏庭に踏入って、其の家の農夫達と喧嘩したことや、斥候せっこうに出た四年生がずらかって
虎狩 (新字新仮名) / 中島敦(著)
事実上また、胆吹を目ざしてなだれ込んで来るというような形勢が、最も有り得る形勢であると見られる理由もある。それが、この斥候せっこうを放つ所以ゆえんなのでありました。
双方から斥候せっこうを出して、その斥候が敵の影を認める度に、遠方から射撃してかえるように、はかばかしい衝突もせぬ代りに、平和に打ち明けることもなくているのは、こう云うわけである。
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
一人の下士を添えて斥候せっこうに出すことになりましたのです。
死後の恋 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
すると、斥候せっこう喜六君きろくくんが、かえってきました。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
其処そこ斥候せっこうが二名け戻って来て報告した。
戦争雑記 (新字新仮名) / 徳永直(著)
敵情を探るためには斥候せっこうや、探偵が苦心に苦心を重ねてからに、命がけで目的を達しようとして、十に八九は失敗しくじるのだ。
海城発電 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
銭糧せんりょう部の主宰には、柴進さいしん、李応。——五虎ノ大将、騎兵八ひょう隊の将、歩兵、斥候せっこう、輸送、情報、水軍など、すべての役割に、その人と特技とを配して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて長安ちょうあん都下の悪少年だった男だが、前夜斥候せっこう上の手抜かりについて校尉こうい成安侯せいあんこう韓延年かんえんねんのために衆人の前で面罵めんばされ、むち打たれた。それを含んでこの挙に出たのである。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
五人の原地人斥候せっこうは、酒をのんでいる酋長しゅうちょうのところへ、とびこんできた。
もういたる所で、敵の斥候せっこうに会う。また、後方監視隊にぶつかる。すでにこの辺は敵地なのだ。厚ぼったい防禦線が、いったい幾重になっているのかと、その厳重さに驚かれる。
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
浚稽山しゅんけいざんの山間には十日余とどまった。その間、日ごとに斥候せっこうを遠く派して敵状を探ったのはもちろん、附近の山川地形をあますところなく図に写しとって都へ報告しなければならなかった。
李陵 (新字新仮名) / 中島敦(著)
すると早くも、その附近まで出ていた劉繇りゅうよう斥候せっこう
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斥候せっこうじゃろう、わいは」
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
斥候せっこう?」
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)