憎惡ぞうを)” の例文
新字:憎悪
かれ憎惡ぞうを嫉妬しつととを村落むらたれからもはなかつた。憎惡ぞうを嫉妬しつともない其處そこ故意わざ惡評あくひやうほど百姓ひやくしやう邪心じやしんつてなかつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
私の方へ向けられる時、彼女の一べつは、いまは以前にもまして壓へ切れない、根強ねづよ憎惡ぞうをを表はしてゐたから。
宗助そうすけこの一語いちごなかに、あらゆる自暴じばう自棄じきと、不平ふへい憎惡ぞうをと、亂倫らんりん悖徳はいとくと、盲斷まうだん決行けつかうとを想像さうざうして、是等これら一角いつかくれなければならないほど坂井さかゐおとうと
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その髮の毛が、一本ずゝけるのに從つて下人のこゝろからは、恐怖が少しづつ消えて行つた。さうして、それと同時どうじに、この老婆に對するはげしい憎惡ぞうをが、少しづゝ動いて來た。
羅生門 (旧字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
名利みやうりの外に身をけば、おのづから嫉妬の念も起らず、憎惡ぞうをの情もきざさず、山も川も木も草も、愛らしき垂髫うなゐも、みにくき老婆も、我れに惠む者も、我れを賤しむ者も、我れには等しく可愛らしく覺えぬ。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
雖然けれども妻に對して一種の反抗心を持ツてゐるのは事實だ………此反抗心は弱者が強者に對する嫉妬しつとなんだから、いきほひ憎惡ぞうをの念が起る………所詮つまりおれは妻が憎いのでなくツて、妻の強壯な體を憎むでゐるのだ。
青い顔 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
冥府のあるじ*アイデース、最も人の憎惡ぞうをたり
イーリアス:03 イーリアス (旧字旧仮名) / ホーマー(著)
狐疑こぎしてるやうなその容貌ようばうとは其處そこあへ憎惡ぞうをすべき何物なにもの存在そんざいしてないにしても到底たうてい彼等かれら伴侶なかますべてと融和ゆうわさるべき所以ゆゑんのものではない。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それが少時しばらくすると、たんなる憎惡ぞうをねん變化へんくわした。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
うしてかれ卯平うへいたいする憎惡ぞうをねんかれこゝろきり穿うがつてさらくぎもつ確然しつかちつけられたのであつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)