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惻隠
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そくいん
ふりがな文庫
“
惻隠
(
そくいん
)” の例文
旧字:
惻隱
かかる手記を御覧候わば、恵み深き貴下は必ずや
惻隠
(
そくいん
)
の情を起こし下さるべしと存候。真の哲学者は常に強き情緒を感ずるものに候えば。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
その時の美妙の返事は敗残者の卑下した文体で、勝誇った
寵児
(
ちょうじ
)
のプライドに
充
(
み
)
ちた昔の面影は微塵も見られないで
惻隠
(
そくいん
)
に堪えられなかった。
美妙斎美妙
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
先生の
仁慈
(
じんじ
)
惻隠
(
そくいん
)
、忠義慨然、
呂望
(
りょぼう
)
の才を
展
(
の
)
べ子房の大器を
施
(
ほどこ
)
すを。備、これを敬うこと神明の如く、これを望むや
山斗
(
さんと
)
の如し。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
惻隠
(
そくいん
)
の心はなかったが、女に眼のない大弥太であった、どんな女の乞食がいるのか? こう思って辻堂へ近寄って行った。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
而
(
しか
)
して寛厚は
宗
(
そう
)
に
如
(
し
)
かざるも、其の
惻隠
(
そくいん
)
の意に至っては、各条に散見せりと評せしめ、余威は遠く
我邦
(
わがくに
)
に及び、徳川期の識者をして
此
(
これ
)
を研究せしめ
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
▼ もっと見る
ある程度の
憚
(
はばか
)
りもあるが、同時に女性として、包み隠さねばならぬほどの秘密を、かりそめにも
発
(
あば
)
きうかがうには忍びない、というしおらしい
惻隠
(
そくいん
)
もある。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それは誰でもこの不幸な女に
惻隠
(
そくいん
)
の情を感じざるを得ないほど、いじらしさ、切なさのこもったものだった。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
おずおずその袂を
曳
(
ひ
)
きて、
惻隠
(
そくいん
)
の
情
(
こころ
)
を動かさむとせり。
打俯
(
うちふ
)
したりし
婦人
(
おんな
)
は
蒼白
(
あおじろ
)
き顔をわずかに
擡
(
もた
)
げて
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
悲しみ気遣いながら抵抗せず、予の
為
(
な
)
す
任
(
まま
)
に
順
(
したが
)
いしは
転
(
うた
)
た予をして
惻隠
(
そくいん
)
の情に堪えざらしめた。
十二支考:07 猴に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
そんな光景を立ち去らずにあくまで見て胸を痛めているのは、彼には近頃
自虐
(
じぎゃく
)
めいた習慣になっていた。
惻隠
(
そくいん
)
の情もじかに胸に落ちこむのだ。以前はちらと見て、通り過ぎていた。
馬地獄
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
なおこの乞食には
優
(
まさ
)
るべし、思えば気の毒の母よ子よと
惻隠
(
そくいん
)
の心
禁
(
とど
)
めがたくて、覚えず階上より声をかけつつ、妾には当時大金なりける五十銭紙幣に
重錘
(
おもり
)
をつけて投げ与えけるに
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
だけれども、批判は批判として、会場の雰囲気を支配しているのは、マヤコフスキーへの親愛の感情であり、彼の死に対してぼんやり人々の胸の底にわき出ている
惻隠
(
そくいん
)
の情だった。
道標
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
彼にしては
柄
(
がら
)
にもなくあの好人物の老大納言に
惻隠
(
そくいん
)
の情を催して、これ以上罪を重ねることが
厭
(
いと
)
わしくなったところから、努めて彼女のことを忘れるようにして、遠のいたのであった。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
過去の遺物のうちにつなぎ止められてるその
憐
(
あわ
)
れな魂を、彼は痛切に感じた。そして
惻隠
(
そくいん
)
の情に打たれた。けれども多少とがめるような荒い口調で、ぼんやりしてる彼女を呼びさまそうとした。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
思うに何代目かの管長候補は、二人の青道心が、酔わないうちから女を論じ、酔えば益々女を論じ、徹頭徹尾女を論じて悟らざること
夥
(
おびただ
)
しい浅間しさをあわれみ、
惻隠
(
そくいん
)
の心を催したのに相違ない。
勉強記
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
惻隠
(
そくいん
)
の心は、どんな人にもあるというじゃありませんか。奥さんを憎まず
怨
(
うら
)
まず呪わず、一生涯、労苦をわかち合って共に暮して行くのが、やっぱり、あなたの本心の理想ではなかったのかしら。
竹青
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「コラッ、貴様ッ、ろくろく働きもせぬくせに、
生血
(
いきち
)
のような水を
唯
(
ただ
)
飲みしようとは、
怪
(
け
)
しからん奴だ」と
呶鳴
(
どな
)
り付けたが、考えてみればあれも人の子、咽の渇くのは同じだろうと
惻隠
(
そくいん
)
の心も起り
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
そうだ、ともすれば鈍ろうとする復讐の念を強めるためにも、また時あって湧き起こる
惻隠
(
そくいん
)
の情を消すためにも……
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、どこかでは、彼にも、そんな
惻隠
(
そくいん
)
の
情
(
じょう
)
めいたものが、吹きぬけるように、ささやかれていたことかもしれない。
私本太平記:05 世の辻の帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
弟の阿利吒は尊げなる僧の
饑
(
う
)
ゑたる
面色
(
おももち
)
して空鉢を
捧
(
ささ
)
げ還る
風情
(
ふぜい
)
を見るより、図らず
惻隠
(
そくいん
)
の善心を起し、
往時
(
むかし
)
兄をば
情
(
つれ
)
なくせしことをも思ひ浮めて悔いつつ
印度の古話
(新字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
一個の滅びたる人間として
惻隠
(
そくいん
)
の情を催してこられたのです。ところで妹さんの心の中に可哀想という気が起こると、もちろん当人にとって何より危険な事なんです。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
何物にかすがろうとする信頼心を、むしろ憐れまなくてはならない! という
惻隠
(
そくいん
)
を移して、やはり、この金椎少年の祈り、すなわち病気平癒のために支払わんとする代価を
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
マリユスはそのあわれな女を、深い
惻隠
(
そくいん
)
の情で見守っていた。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
わが敵手もさすがに
惻隠
(
そくいん
)
の心を起し給いし様子に御座候。
花吹雪
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
人々は、彼の落着いた身支度と、
枯淡
(
こたん
)
な人がらに
固唾
(
かたず
)
をのんで見惚れた。また、子を
庇
(
かば
)
う親心と、君に仕える身の辛さを思いやって、
惻隠
(
そくいん
)
の情に打たれた。
柳生月影抄
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「なまじ小諸の牧野の城で百姓ばらの一揆を見、
惻隠
(
そくいん
)
の心を起こしたのが、今日の失脚の原因だったのだ!」
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
身なりと全体の様子で、二人は彼を全くの
乞食
(
こじき
)
、街頭における本物の
袖乞
(
そでご
)
いと思い込んだらしい。大枚二十カペイカ奮発したのも、あの鞭が女に
惻隠
(
そくいん
)
の情を起こさせたからに違いない。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
片耳で大男で
縹緻
(
きりょう
)
の悪い、
鴫丸
(
しぎまる
)
さんという口上いいが、片恋なるものをしていましてね、深夜の京都の町々を『お妻さんお妻さん』と呼び歩きますので、
惻隠
(
そくいん
)
の情を起こしましてね
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
と、ほくそ笑みにも、ふと
惻隠
(
そくいん
)
を抱く尊氏だった。
私本太平記:10 風花帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そぞろ
惻隠
(
そくいん
)
の心を起こし抱き上げて見れば枕もとに小さい行李が置いてある。
大鵬のゆくえ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
惻隠
(
そくいん
)
の情が起こるのであった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
惻
漢検1級
部首:⼼
12画
隠
常用漢字
中学
部首:⾩
14画
“惻”で始まる語句
惻々
惻然
惻心
惻懚
惻隱