御姿おすがた)” の例文
今の御姿おすがたはもう一里先か、エヽせめては一日路いちにちじ程も見透みとおしたきを役たたぬ此眼の腹だたしやと門辺かどべに伸びあがりての甲斐かいなき繰言くりごとそれももっともなりき。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わすられぬは我身わがみつみひととがおもへばにくきは君様きみさまなりおこゑくもいや御姿おすがたるもいやればけばさるおもひによしなきむね
闇桜 (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
三界六道さんがいろくどうの教主、十方最勝じっぽうさいしょう光明無量こうみょうむりょう三学無碍さんがくむげ億億衆生引導おくおくしゅじょういんどう能化のうげ南無大慈大悲なむだいじだいひ釈迦牟尼如来しゃかむににょらいも、三十二そう八十種好しゅこう御姿おすがたは、時代ごとにいろいろ御変りになった。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
御姿おすがたを拝まないで、何をわたしたちが信ずるんです。貴下あなた、偶像とおっしゃるから不可いかん。
春昼 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
もっともこのたまかたちは、じっとおしずまりあそばしたとき本来ほんらいのお姿すがたでございまして、一たんおはたらきかけあそばしました瞬間しゅんかんには、それぞれことなった、にも神々こうごうしい御姿おすがたにおかわあそばします。
是を湯に入れ汁に投ずれば、単純なる我々の煮団子にだんごであり、なべで焼けば普通のオヤキすなわち焼餅やきもちとなるのだが、形をこしらえるには生のままの時に限るので、それでしとぎ御姿おすがたと謂ったのかと思う。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
(とろりと酔える目に、あなたに、きざはしなるお沢の姿を見る。あわただしくまうつむけに平伏ひれふす)ははッ、大権現だいごんげん様、御免なされ下さりませ、御免なされ下さりませ。霊験あらたか御姿おすがたに対し恐多おそれおおい。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
昔よりも一層いっそう丈夫そうな、頼もしい御姿おすがただったのです。
俊寛 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
人間にんげんまへとき如意輪によいりん御姿おすがたは、スツと松蔭まつかげやゝとほく、くらちひさくをがまれた。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)