川上かわかみ)” の例文
生まれてからまだ二十日はつかばかりの子山羊を、昼間川上かわかみへつれていって、こんちゅうを追っかけているうち、つい忘れてきてしまったのだ。しまった。
(新字新仮名) / 新美南吉(著)
「ああ、川上かわかみさんですか。このごろ、してきたかたでしょう。こちらの路地ろじはいって、つきたりのいえです。」と、たばこおしえてくれました。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
それで、川上かわかみのほうへのぼったり、川下かわしものほうへくだったりしながら、研究けんきゅうをつづけるというありさまでした。
先生は更にわがかたには見向きもしたまはず破笠子を相手に今朝こんちょう巴里パリー川上かわかみ(壮士役者音二郎が事なり)より新聞を郵送しきたれりとて巴里劇界の消息を語出かたりいだされぬ。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
川上かわかみの空に湧いて見えた黒雲は、玉川たまがわの水をうて南東に流れて来た。彼の一足毎に空はヨリくらくなった。彼は足を早めた。然し彼の足より雲の脚は尚早かった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ある日、おばあさんが、川のそばで、せっせと洗濯せんたくをしていますと、川上かわかみから、大きなももが一つ
桃太郎 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
それが今度も汽車の中でこわれてから役に立たぬ時計を持って歩いていたのであった。僕は時間を大凡おおよそで見積ってやろうと思って、いつの間にか川上かわかみの方に歩いて行った。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
この奇妙な死骸の発見者は、金田かねだという鉱員と、川上かわかみ山岸やまぎしという二人の少年鉱員であった。
宇宙戦隊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
東京の近くでは信州佐久さく川上かわかみ地方から、諏訪すわ伊那いなにかけて南信一円、甲州のほぼ全部、駿河するがの富士川以東と伊豆いずの片端に、ヰロリとヒジロという語が今も行われている。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
私は先刻ここで川上かわかみしきりに主題循環論をやった、そのうち川上は帰ってしまったのだ……それから私はこんな氷雨ふる夜を捕吏にわれて逃げ廻る破獄囚はごくしゅうのことを考えながら
流転 (新字新仮名) / 山下利三郎(著)
それによると女の父は、この川上かわかみの部落のおさをしている、足名椎あしなつちと云うものであった。ところが近頃部落の男女なんによが、続々と疫病えきびょうたおれるため、足名椎は早速巫女みこに命じて、神々の心を尋ねさせた。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
喧しく云えば船を動かして、川をのぼったりくだったり、川上かわかみの天神橋、天満橋てんまばしから、ズットしも玉江橋たまえばし辺まで、上下かみしもげてまわっやったことがある。その男は中村恭安なかむらきょうあんと云う讃岐の金比羅こんぴらの医者であった。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
「旦那方は明日は川上かわかみへいらっしゃいますか?」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
兵十はそれから、びくをもって川からあがりびくを土手どてにおいといて、何をさがしにか、川上かわかみの方へかけていきました。
ごん狐 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
ちいちゃんは、あちらのかどにあった、たばこんでいきました。そして、川上かわかみといういえをたずねたのです。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
遥か川上かわかみの空のはずれに夏の名残を示す雲の峰が立っていて細い稲妻が絶間たえまなくひらめいては消える。
すみだ川 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
「おじょうちゃん、川上かわかみさんといううちをごぞんじありませんか。」と、おばさんは、きました。
鳥鳴く朝のちい子ちゃん (新字新仮名) / 小川未明(著)
川上かわかみには、どこかで大雨おおあめったとみえて、みずかさがしていました。
海ぼたる (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのとき、川上かわかみから、あたらしいが、ながれてきました。
水七景 (新字新仮名) / 小川未明(著)