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天運
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てんうん
父君が
甞て
望める
如き
海軍々人風の
男兒となりて、
毎日/\
賢こく、
勇ましく、
日を
送つて
居る
有樣をば
目に
見る
如くに
語り、
大佐よ、
濱島君よ、
春枝夫人よ、されば
吾等は
今や
天運開けて
尋ねしかど未だ
天運の
定まらざるにや一向に手懸りさへもなく
空く其年も
暮て明れば享保五年となり春も
中旬過て
彌生の始となり
日和も
長閑に打續き上野
飛鳥山或ひは
隅田川などの
櫻見物に人々の
群集しければ今ぞ
敵を
今、
此厄難に
際して、
吾等の
採る
可き
道は
只二つある、
其一つは、
何事も
天運と
諦めて、
電光艇と
共に
此孤島に
朽果てる
事——
然しそれは
何人も
望む
處ではありますまい——
他の
一策は
他でも
無い