土産話みやげばなし)” の例文
繰り返してお父うさんに書いてよこしたのが、どうも特別な意味のある事らしく、帰って顔を見て、土産話みやげばなしにするのが待ち遠いので
かのように (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それは有難かつたな、まア、足を洗つてゆつくりするが宜い。後で一とつ風呂浴びて、一杯引つかけるとして、先づその土産話みやげばなしだ」
で、その時はツァ・ルンバより英杜戦争その他いろいろのダージリンからの土産話みやげばなしなどを聞いて別れたことでございます。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
待っていますから。あれは伊那の縫助さんの届けものです。あの人はわたしの家へも寄ってくれて、いろいろな京都の土産話みやげばなしを置いて行きました。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
普通弁と薩摩弁でしかたばなしまでしての土産話みやげばなしは無難であったが、無難でないのはそれに続く自慢話であります。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
が、取立とりたてて春雨はるさめのこの夕景色ゆふげしきはなさうとするのが趣意しゆいではない。今度こんど修善寺しゆぜんじゆきには、お土産話みやげばなしひとつある。
雨ふり (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
降りしきる雨の中を車で近文ちかぶみに往って、土産話みやげばなしにアイヌの老酋ろうしゅうの家を訪うて、イタヤのマキリなぞ買って帰った。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
これは「電球にからまる怪異」の話とともに、大正三年ごろハワイに住っていた田島金次郎おう土産話みやげばなしである。
机の抽斗 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
雪之丞は、かごに揺られながら、今夜、広海屋がどんな土産話みやげばなしを聴かせるであろうかを、楽しんでいる。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
その代り僕は、いろいろな土産話みやげばなし青竜王せんせいにあげるつもりですよ。昨夜ゆうべ舞台下で殺された男ネ、あれは竜宮劇場に毎日のように通っていた小室静也こむろしずやという伊達男だておとこですよ。
恐怖の口笛 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「疲れたろう。寝ないか。」私は大隅君の土産話みやげばなしのちょっと、とぎれた時にそう言った。
佳日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
わしひとりのいのちをとるのに、なんとぎょうぎょうしいことであろう。冥土めいどにおわす祖父そふ信玄しんげんやその他の武将たちによい土産話みやげばなし甲州侍こうしゅうざむらいのなかにも、こんな卑劣者ひれつものがあったと笑うてやろう!
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
我邦わがくにに来遊する外国の貴紳が日本一の御馳走と称し帰国後第一の土産話みやげばなしとなすは東京牛込うしごめ早稲田わせだなる大隈伯爵家温室内の食卓にて巻頭に掲ぐるは画伯水野年方みずのとしかた氏が丹青たんせいこらして描写せし所なり。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
あっしの洋行の土産話みやげばなしですか。
人間腸詰 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
とうさんがとほ外國ぐわいこくはうからかへつたとき太郎たらう次郎じらうへの土産話みやげばなしにとおもひまして、いろ/\なたびのおはなしをまとめたのが、とうさんの『をさなきものに』でした。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
「それはまあ、ようございました、そのお土産話みやげばなしを伺おうじゃありませんか」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
啓之助がほうっておくと、こんどは、まだ絶巓ぜってんには氷原ひょうげんもあろうというのに、ありの小道まで踏破とうはしゆかねば、阿波守への土産話みやげばなしにならぬといいだして、駄々だだな若公卿の本領を発揮し、さんざんに
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わしがの、うやつてござるあひだ、おとぎ土産話みやげばなしを聞かせましよ。
二世の契 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
旧暦三月上旬のことで、山家でも炬燵こたつなしに暮らせる季節を迎えている。相手は旅の土産話みやげばなしをさげて来た縫助である。おまけに、腰は低く、話はちょくな人と来ている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「江戸の土産話みやげばなしでも聞かせてくれ」
まあ、このやまなか土産話みやげばなしに、そこにあるふるいしでもよくつてください。これから東京とうきやうへおいでになりましたら、そのいし發句ほつくが一つつてあつたとおはなください。
ふるさと (旧字旧仮名) / 島崎藤村(著)
以太利イタリーの旅行を終えて岸本の宿へ土産話みやげばなしを置いて行った人には京都大学の考古学専攻の学士がある。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
気の置けない郷里の人たちを前にしての千里の土産話みやげばなしには、取りつくろったところがない。この禰宜はただありのままを語るのだと言って、さらにうちとけた調子で
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのおりの土産話みやげばなしが芝居好きな土地の人たちをうらやましがらせた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)