唯一ゆいつ)” の例文
うなると、唯一ゆいつの頼みは先輩の三好さんだ。以来年賀状を一枚出したきりで具合が悪かったけれど、仕方がない。私は早速伺って
ガラマサどん (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
唯一ゆいつの楽しみである鉄砲で鳥をいることも禁じられている、それは一つの発砲で、悪漢どもに知られたくないからだ、春の日がかがやくのに
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
工業的こうぎょうてきの機械を用うる事はなく、くわすきかまなどが彼等唯一ゆいつの用具であくまでもそれを保守して、新らしい機械などには見向きもしない有様で
農村 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
与八は、みどりのためにかげになり日向ひなたになって力を添え、みどりは与八与八と唯一ゆいつの頼みにして、二人は兄妹きょうだいのように親しみを加えてゆきます。
もとは、佐倉の佐藤塾で洋方医の病理解剖を勉強していたが、墓から持って来たたったひとつの髑髏しゃりこうべ唯一ゆいつの標本。
顎十郎捕物帳:14 蕃拉布 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
といって、身をまもる唯一ゆいつの愛刀、般若丸はんにゃまるはそのまえに、卜斎の足蹴あしげにはねとばされて、ひろいとって立つはない。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そのころ、この唯一ゆいつの、そして最も大きななぐさめである通信がどうも今までのように、工合よくはこばなくなった。
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と気が気ではないが、この場合、たけりたっている鍛冶屋をなだめすかしておいて、そのまに身を抜いて浅草へ走るのが、唯一ゆいつの道であると彼女は考えているのだった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
五百羅漢を彫った当羅漢寺の創建者である松雲元慶げんけい禅師の観音もありましたこと故、私の修業時代は、本所の五ツ目の五百羅漢寺といえば、東京方面における唯一ゆいつの修業場であって
小走りに駆け入りしは騎馬隊の兵士が常に集まりて酒飲むこのちまた唯一ゆいつの旗亭なり。
わかれ (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
頃日このごろく——當時たうじ唯一ゆいつ交通機關かうつうきくわん江戸えど三度さんどとなへた加賀藩かがはん飛脚ひきやく規定さだめは、高岡たかをか富山とやまとまり親不知おやしらず五智ごち高田たかだ長野ながの碓氷峠うすひたうげえて、松井田まつゐだ高崎たかさき江戸えど板橋いたばしまで下街道しもかいだう
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それのみならず日本地震學會につぽんぢしんがつかいから出版しゆつぱんせられた二十册にじつさつ報告書ほうこくしよは、當時とうじ世界せかいおい唯一ゆいつ地震學雜誌ぢしんがくざつしであつたのみならず、收録しゆうろくせられた材料ざいりよう、ミルン教授きようじゆによつてもつせられたるおほくの論文ろんぶん
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
それを思うと、君は腹立たしい気になるかも知れぬが、僕は然し、北沢が投書を依頼したという人にはすこしも興味を感じなかったのだ。それよりも北沢の唯一ゆいつの目的が知りたくてならなかった。
闘争 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
また青春の唯一ゆいつ効果しるしだ。
ルバイヤート (新字新仮名) / オマル・ハイヤーム(著)
米友にとってお君は唯一ゆいつおさ馴染なじみであり、お君にとっても米友は唯一の幼な馴染でありました。
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その白骨をとむらうと想像そうぞうしえよう、それでもかれは、地図をかいた、その地図は、いまぼくらの唯一ゆいつの案内者となり、その洞穴は、いまぼくらの唯一の住宅となった。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
海軍当局の調査も、新聞の報ずるところとは大した相違がなかった。無論、現場げんじょう付近にいた唯一ゆいつの人間である儂は、調査委員会の席上で証言をさせられてこんなことを云った。
恐しき通夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
この若い、そして若いがゆえにねばりのすくない栄三郎の心をひきたたせて、そばから怠らずはげましているのが、唯一ゆいつの助太刀、同時に今は友であり師である蒲生泰軒先生であった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
以上いじょう縄取なわどりによれば、多摩たま長流ちょうりゅう唯一ゆいつのたのみとし、武蔵野むさしの平地へいちと上流のてきにのみそなえをおかるるお考えのようにぞんずるが、かりに、御岳みたけうらにあたる御前山おんまえさん奇兵きへいをさし向け
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とお母さんはそれが唯一ゆいつの用向きのように訊いた。
求婚三銃士 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
宇津木兵馬は残念の余り、張り詰めた勇気も一時に砕くるの思いでしたが、ここに唯一ゆいつの手がかりというのは、机竜之助が芹沢鴨に宛てた書面一通を発見したことで、その中に
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
孔明に代って従ってきた唯一ゆいつの軍師である。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正しい理解は、混乱を救う唯一ゆいつの手だ
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
剣道の話のみは、竜之助の気をそそる唯一ゆいつのものです。