じゅ)” の例文
仰向あおむけのままじゅすと、いくらか心が静まったと見えて、旅僧はつい、うとうととしたかと思うと、ぽたり、と何か枕許まくらもとへ来たのがある。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
機を計っていた猛獣隊は、一度にくさりを解き、或いはおりを開いた。と共に木鹿大王は、口の内にじゅを念じ、なにかいのるような恰好をしだした。
三国志:10 出師の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
如何に愛宕あたごの申子なればとて、飯綱愛宕の魔法を修行し、女人禁制の苦を甘ない、経陀羅尼きょうだらにじゅして、印を結びじゅを保ち、身を虚空にあがらせようなどと
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
『心経』一巻を読誦するいとまなくば、せめてこの般若波羅蜜多の「じゅ文」を唱えよ、という思し召しであります。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
『嬉遊笑覧』八に、このじゅ、もと漢土の法なり。『博物類纂』十に、悪犬に遇わば左手を以てとらより起し、一口気を吹きめぐっていぬに至ってこれをつかめば犬すなわち退き伏すと。
木に竹をつぐということはあるが、これは医につぐにじゅを以てするとでもいうのでしょう。
大菩薩峠:26 めいろの巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
汪は初めてそれをさとったが、今更どうすることも出来ないので、日ごろ習いおぼえた大悲のじゅを唱えて、ただ一心にその救いを祈っていると、その夜半に大風雨がおこって、森の立ち木も震動した。
えらいのは、旅の修行者しゅぎょうじゃ直伝じきでんとあって、『姑蘇啄麻耶啄こそたくまやたく』とじゅして疣黒子いぼほくろを抜くという、使いがらもって来いの人物。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「こっちで、法力をもってすれば、親鸞も法力をもってさとり、こっちで呪殺じゅさつの縄を張れば、彼も破邪のじゅを行って、吾々の眼をくらましたに違いない」
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
つまりこの般若波羅蜜多が、そのまま陀羅尼だらになのです。真言しんごんなのです。じゅなのです。で、この般若の功徳を四通りに説明し、讃嘆したのが、ここにあるこの四種の呪です。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
それでも、癒らぬ者は、張角自身が行って、大喝だいかつじゅとなえ、病魔を家から追うと称して、符水ふすいの法を施した。それで起きない病人はほとんどなかった。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さるにや気も心もよわよわとなりもてゆく、ものを見る明かに、耳の鳴るがやみて、恐しき吹降りのなかに陀羅尼だらにじゅするひじりの声々さわやかに聞きとられつ。
竜潭譚 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
いったい「じゅ」とか「真言しんごん」とか「陀羅尼だらに」などというものは、いわゆる「一字に千理を含む」で、たった一字の中にさえ、実に無量無辺の深い意味が含まれているのですから
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
念珠ねんずを揉んで、一心不乱に何やらじゅを唱えているほか、その広い床はがらんとして、かすかに燈明のまたたきが、おぼろに二つの影にゆらいでいるだけだった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(怪しき声にてじゅす。一と三の烏、同時にひざまずいて天を拝す。風一陣、ともしび消ゆ。舞台一時暗黒。)
紅玉 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「きさまにも神行法を授けるが、わしが呪文じゅもんをとなえると、たちまち身は雲を踏んで飛行ひぎょうする。じゅを解かねば、止まるにも止まれんのだから、心得ておけよ」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
(怪しき声にてじゅす。一と三の烏、同時にひざまずいて天を拝す。風一陣、ともしび消ゆ。舞台一時暗黒。)
紅玉 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
盧俊儀ろしゅんぎも、はっとその真剣さに打たれてか、共に息をこらして、伏羲ふっき神農のじゅを念じずにはいられなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ふと、前刻さっきの花道を思い出して、どこで覚えたか、魔除まよけのじゅのように、わざと素よみの口のうちで、一歩ひとあし二歩ふたあし、擬宝珠へ寄った処は、あいてはどうやら鞍馬の山の御曹子おんぞうし
白花の朝顔 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
すばやく隠形おんぎょういんをむすび、縮地飛走しゅくちひそうじゅをとなえるかと見れば、たちまち雷獣らいじゅうのごとく身をおどらせ、おどろく人々の眼界から、一気に二、三町も遠くとびさってしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わし陀羅尼だらにじゅした。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かれは坐禅ざぜんを組むようにすわった。そして、さいごにもういちど蝙蝠こうもりが壁をすべってくるのを待ちかまえこんどは、口にじゅをとなえて、つーッと一本のほそい絹糸のような線をきだした。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「賊将張宝が、じゅを唱えて、天空から羅刹らせつの援軍を呼び出したぞ」
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)