呪文じゆもん)” の例文
家へ帰つて色々古い書物をあさつて見ると、封を解く呪文じゆもんだけはうにか了解のみこめたが、さて封を解いたものかうか一寸始末に困つた。
「それを出して、焼けてゐない方を前へ向けて、クウル、クリイル、ケーレと呪文じゆもんをとなへるのだ。いゝか、やつてみなさい。」
夢の国 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
……うでないと、あのふくろふとなへる呪文じゆもんけ、寢鎭ねしづまつたうしたまちは、ふは/\ときてうごく、鮮麗あざやか銀河ぎんが吸取すひとられようもはかられぬ。
月夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
と、云つて、手にもつてゐた、数珠をもみながら、あじやら、もじやら、うじやら、もじやらと、呪文じゆもんを、唱へはじめました。
岩を小くする (新字旧仮名) / 沖野岩三郎(著)
かくて果てしなき風と雲との爭ひ、その中を、せめてもの呪文じゆもんの聲を張り上げ、鉢を鳴らして、人間は、はね飛ばされじとひまはつてゐる。
山岳美観:02 山岳美観 (旧字旧仮名) / 吉江喬松(著)
その時あの印度人の婆さんは、ランプを消した二階の部屋の机に、魔法の書物を拡げながら、しきり呪文じゆもんを唱へてゐました。
アグニの神 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
かれはその蝋燭ろうそくを小さい白木しらきの箱に入れて、なにか呪文じゆもんのやうなことをとなへた上で、うや/\しく弥助にわたした。
高らかに呪文じゆもんを稱へて、その法力を誇示こじしてゐた壇上の東海坊は、何に驚いたか、急に壇上を驅け廻り、床を叩き、壇を蹴飛ばし、淺ましくも怒號するていが、渦卷く焔の間から
今日此頃けふこのごろ全盛ぜんせい父母ふぼへの孝養こうよううらやましく、おしよくとほあねの、いのらいのかずらねば、まちびとふるねづみなき格子かうし呪文じゆもんわかれの背中せな手加减てかげん秘密おくまで、たゞおもしろくきゝなされて
たけくらべ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
何やら呪文じゆもんをとなへると、すぐその指のさき章魚たこいぼのやうになつたので、それでべた/\と壁に吸ひついて、その塀をのりこえて、また豆小僧のあとを追ひました。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
鉄冠子はそこにあつた青竹を一本拾ひ上げると、口の中に呪文じゆもんを唱へながら、杜子春と一しよにその竹へ、馬にでも乗るやうにまたがりました。すると不思議ではありませんか。
杜子春 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
蚊帳かやと線香と桑原の呪文じゆもんで表象される迷信的な江戸つ子が、大雷鳴、大夕立の眞つ最中に、冒涜ばうとく的な言動、——わけても人殺しなどといふ、だいそれたことをやりさうもないことは
あきれてみてゐましたが、たちまち何やら呪文じゆもんをとなへると、大きな魚の形になつて、ざあ/\なみを立てながら、その広い川をまたたくうちに泳ぎきつて、向うへ渡つてしまひました。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
あれは本當の惡黨さ、——自分でなぞ呪文じゆもんを書いて置きながら、用人に、耶馬臺やばだいみたいだ——つて言つたさうだ。誰かに讀んで貰はなきや困るが、自分で讀んぢやまづかつたのさ。
「どうして? なぜ?」「あの男は俺の羊を呪つたやつだ。俺は俺の羊飼ひに教はり、三本のくぎを鍋の中で煮てから、呪文じゆもんを唱へてやることにした。あの男はその晩に死んでしまつたのだ。」
うらなひ、禁呪まじなひ呪文じゆもん、そんなものの外に、或種の魔法の杖を持つて歩き、それが倒れた方角と角度と、顫動せんどうとで、地下の埋藏金を見出す方法をさへ、一般に信じられた時代があつたのでした。
「神農樣をおまつりして、朝夕燈明をあげて、呪文じゆもんを稱へる」