呑氣のんき)” の例文
新字:呑気
全く無神經らしい健康な女を見てゐると、おつさんのやうなぢいさんでも、何の交換條件も無しに身を任せさうな氣もして、三田の心は呑氣のんきになつた。
大阪の宿 (旧字旧仮名) / 水上滝太郎(著)
その松原の蔭の小さな可愛らしい家には一人二人と大工や左官たちが呑氣のんきさうに出入りしてゐるのみであつた。
樹木とその葉:04 木槿の花 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
其意味を面倒に述べ立てるのは大袈裟おほげさだからしますが、私は自分で小説を書くとそのあとが心持ちが惡い。それで呑氣のんき支那しなの詩などを讀んで埋め合せを付けてゐます。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
十一時頃じごろからねつたので自分じぶんはプラツトホームの眞中まんなかまうけある四はう硝子張がらすばり待合室まちあひしつはひつてちひさくなつてると呑氣のんきなる義母おつかさんはそんなこととはすこしも御存知ごぞんじなく待合室まちあひしつ
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それには、お土産には綺麗な貝殼を持つて歸りませうなどゝ呑氣のんきなことが書いてあつた。
孫だち (旧字旧仮名) / 正宗白鳥(著)
「子供などアどうでもいいんです——そんな呑氣のんきなことぢやアありません!」
清吉は呑氣のんきに秋の向島の紅葉しかけた葉櫻の土手を眺めてをります。
「おらは呑氣のんきだ。」とけむりる。
浅茅生 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
たまには學校がくかう下讀したよみやら研究けんきうやらにはれてゐる多忙たばうだとふうもしてせた。小六ころく友達ともだちからさう呑氣のんきなまけものゝやうあつかはれるのを、大變たいへん不愉快ふゆくわいかんじた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
文藝界の人々はまたその上を越して馬鹿呑氣のんきであること。
泡鳴五部作:04 断橋 (旧字旧仮名) / 岩野泡鳴(著)
にいさんも隨分ずゐぶん呑氣のんきね」と小六ころくはういて、なかをつと辯護べんごするやうつた。宗助そうすけ細君さいくんから茶碗ちやわん受取うけとつて、一言ひとこと辯解べんかいもなく食事しよくじはじめた。小六ころく正式せいしきはしげた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
今の人の手にする文學書にはヸーナスとかバツカスとかいふ呑氣のんきな名前はあまり出て來ないやうです。希臘ギリシアのミソロジーを知らなくても、イブセンを讀むにはほとんど差支さしつかへないでせう。
『伝説の時代』序 (旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)