むらが)” の例文
そのとき天の方では、日の沈む側に雲がむらがっていた。その一つは凱旋門がいせんもんに似ていて、次のはライオンに、三番目のははさみに似ている。
冬日記 (新字新仮名) / 原民喜(著)
そのとき天の方では、日の沈む側に雲がむらがっていた。その一つは凱旋門に似ていて、次のはライオンに、三番目のは鋏に似ている。
グーセフ (新字新仮名) / アントン・チェーホフ(著)
パルプを解く槽のあたりに眼をやると、そこにむらがるとうに盛りを過ぎてえしぼんだ黄水仙が、少し出て来た風に重く揺れている。
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
案内者は燭を點して、われ等をして各〻これを手にせしめつ。降りて石階の上に立てば、誰か能く懷舊の情の胸間にむらがり起るを覺えざらん。
悔恨と憂悶と希望と妄想と、あらゆる中年の感慨は雲の如くにむらがり湧く。わたしは此の沈痛なる深夜の感慨をよろこぶ。
写況雑記 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
間違いもなく、これが探しもとめた彼らのトウベツ川であった。上目づかいに見わたす上流の平原は、ひしめきむらがる樹木つづきの緑の海であった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
高いところに樫の若葉、要の葉、桜、楓、地面に山吹や野茨がむらがり出て緑のヷァリエーションをつくる。
わが五月 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
演奏がおわってから、勝三郎らは花園をることを許された。そのはなはだ広く、珍奇な花卉かきが多かった。園を過ぎて菜圃さいほると、そのかたわら竹藪たけやぶがあって、たけのこむらがり生じていた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
此處こゝ谷間たにまる一小村せうそん急斜面きふしやめん茅屋くさやだんつくつてむらがつてるらしい、くるまないからくはわからないが漁村ぎよそんせうなるもの蜜柑みかんやま産物さんぶつらしい。人車じんしや軌道きだうむら上端じやうたんよこぎつてる。
湯ヶ原ゆき (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
荒野に蔽われた田園は、今ちょうど満開のハリエニシダの花が、方々にむらがり咲いていて、ロンドンの暗褐色あんかっしょく黄褐色こうかっしょく、——石板灰色せきばんかいしょくに、あきあきしている目には、とても素晴らしいものに見えた。
くもむらがり立つ出雲いづものタケルが腰にした大刀は
荷船の帆柱と工場の煙筒のむらがり立つた大川口おほかはぐちの光景は、折々をり/\西洋の漫画に見るやうな一種の趣味にてらして、此後このごとも案外長くある一派の詩人をよろこばす事が出来るかも知れぬ。
水 附渡船 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
地にゆだねたる石柱の頭と瓦石のたいとは高草の底に沒し、こゝかしこに色硝子いろガラスの斷片を留めたる尖弧ゴチツコ式の窓をば幅廣き葡萄の若葉物珍らしげにさし覗き、數丈の高さなる墻壁しやうへきの上には荊棘けいきよくむらがり生ぜり。
雲のむらが出雲いずもの國の宮殿。
荷船の帆柱と工場の煙筒のむらがり立った大川口おおかわぐちの光景は、折々西洋の漫画に見るような一種の趣味に照して、このとも案外長くある一派の詩人をよろこばす事が出来るかも知れぬ。