力業ちからわざ)” の例文
自分じぶんみせつて註文ちうもんるほどの資力しりよくはないまでも、同業どうげふもとやとはれて、給金きふきんらうなら、うした力業ちからわざをするにはあたらぬ。
月夜車 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
で、同宿のほかのてあいのように、土方どかただとか車力だとかいうような力業ちからわざでなく、骨も折れずにいい金を取って、年の若いのに一番稼人かせぎにんだと言われている。
世間師 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
何だい、おれにやれる仕事は?——なお念のためにいっておくが、図体は大きくても、法螺の貝を持つだけの力しかないのだぜ、力業ちからわざは御免をこうむるよ。
大菩薩峠:24 流転の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
なに力業ちからわざじゃないから、誰でもできる仕事だが、知っての通りみんな無筆の寄合よりあいだからね。君がやってくれるとこっちも大変便利だが、どうだい帳附は
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ここから雒城らくじょうまでの間だけでも、途中の関門には、大小三十七ヵ所の城がある。力業ちからわざで通ろうとしたら百万の兵をもって三年かかっても難しいであろう。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
きゝ夫はマア御愛惜おいとしい事然樣さうおぼめすは成程御道理もつとも恩を受て恩を知ぬは人でなしとは云ものゝ力業ちからわざにもとゞかぬは金の才覺うか仕樣が有さうな者と夫婦はひざ
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
身をさいなむ借金ぐらしの重圧に、こんなことなら、力業ちからわざだけで頑張っていさえすれば、結句気苦労というものもなく、お君の機嫌もよかった炭坑ぐらしの方が
和紙 (新字新仮名) / 東野辺薫(著)
周囲にたたずんだ若者たちは、彼の非凡な力業ちからわざに賞讃の声を惜まなかった。彼もまたその賞讃の声に報ゆべく、次第に大きな巌石に力を試みようとするらしかった。
素戔嗚尊 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いか、わしも筏乗で力業ちからわざすきだから時々来て一緒にやる事もあるから……旦那さま実に此の子ぐれえ感心な者はありませんよ、私イハア胸え一杯いっぺえになりやしたが
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ところがお鳥の前身は見世物の力業ちからわざの太夫だ。その上聲色こわいろの名人と知れて、何も彼もわかつたよ。
もうめにするとて茶椀ちやわんを置けば、そんな事があります物か、力業ちからわざをする人が三膳の御飯のたべられぬと言ふ事はなし、気合ひでも悪うござんすか、それともひどく疲れてかと問ふ
にごりえ (新字旧仮名) / 樋口一葉(著)
殊に朝早くからデタチの支度したくをして、野良のらや山に出るのでなく、家にいて時々力業ちからわざをするという町の労働者などは、仕事着にわざわざ着換えるのも手数だから、下着は不断のままで
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
或時は角闘すもうを取らせ、または競争はしりくらなどさせて、ひたすら力業ちからわざを勉めしむるほどに。その甲斐ありて黄金丸も、力量ちからあくまで強くなりて、大概おおかたの犬とみ合ふても、打ち勝つべう覚えしかば。
こがね丸 (新字旧仮名) / 巌谷小波(著)
ところが力にも限度があつて、昨日の大関、関脇などが幕下へ落ち遂には三段目へ落ちて引退するといふやうなことにもなり、限度は力業ちからわざには限らない。智力にも限度があり年齢があるものだ。
家康 (新字旧仮名) / 坂口安吾(著)
……もちろん私は源次郎というお方も、喜之介というお方も存じません。しかしお前様のお話によれば、いずれも立派な若旦那なので、力業ちからわざだの危険な業だのには、大方不慣れでございましょう。
真間の手古奈 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
力業ちからわざ
城のある町にて (新字新仮名) / 梶井基次郎(著)
旁々かたがたお邸を出るとなると、力業ちからわざは出来ず、そうかと云って、その時分はまだ達者だった、阿母おふくろを一人養わなければならないもんですから
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「わたしは、骨の折れるような力業ちからわざはできませんけれど、どうかお台所の方へ廻していただきとうございます」
もうめにするとて茶椀ちやわんけば、其樣そんことがありますものか、力業ちからわざをするひとが三ぜん御飯ごはんのたべられぬとことはなし、氣合きあひでもわるうござんすか、れともひどつかれてかと
にごりえ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
右京が京之助を自分の本当の子でないとさとり、お江野をうとんじ始めたから起ったことで、お江野の妹のお鳥は、もと見世物小屋などを渡り歩き、力業ちからわざにすぐれた上、声色こわいろまで巧みだったので