りん)” の例文
数年来鬱積うっせき沈滞せる者頃日けいじつようやく出口を得たる事とて、前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ、われながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
二分ずつ、り減らされてゆくのではあるまいか——どうりんを絶した使い手にしろ、疲れぬ肉体というものを持っている筈がない。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、盲目めくらであり、勘のよいことにおいてりんぜっしている弁信自身が、提灯をつけなければ夜歩きのできないはずはないのです。
大菩薩峠:23 他生の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
つてユーゴのミゼレハル、銀器ぎんきぬす一條いちでうみしときその精緻せいちおどろきしことありしが、このしよするところおそらくりんにあらざるべし。
罪と罰(内田不知庵訳) (旧字旧仮名) / 北村透谷(著)
かうして、古今にりんを絶した俳諧の大宗匠、芭蕉庵松尾桃青たうせいは、「悲歎かぎりなき」門弟たちに囲まれた儘、溘然かふぜんとして属纊しよくくわうに就いたのである。
枯野抄 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
彼にたゞ一つの取柄とりえと云えば、非常に健康に恵まれていたことで、肉体的精力がりんを絶していたであろうことは、そう云う高齢で二十何歳と云う夫人をよう
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
その間、年をけみする二十八、巻帙かんちつ百六冊の多きに達す。その気根の大なるは東西古今にりんを絶しておる。
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
本来、社会生々せいせいもとは夫婦にあり。夫婦のりんみだれずして、親子のしんあり、兄弟姉妹の友愛あり。すなわち人間の家(ホーム)を成すものにして、これを私徳の美という。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
昔々むかし/\ところに三にんちひさな姉妹きやうだいがありました』と福鼠ふくねずみ大急おほいそぎではじめて、『其名そのなを、えいちやん、りんちやん、ていちやんとつて、三にんともみん井戸ゐどそこんでゐました——』
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
「住居は湯島横町、名はりんと申します」
五瓣の椿 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
いやいやながら久米一にびを入れその日に、いよいよ焼くとなった増長天王ぞうちょうてんのうの像をうけ取った。みると、さすがにりんぜっしたできばえである。
増長天王 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
成就せしめんとする大檀那おおだんなは天下一人もなく数年来鬱積うっせき沈滞せるもの頃日けいじつようやく出口を得たることとて前後ぜんご錯雑さくざつ序次じょじりんなく大言たいげん疾呼しっこ我ながら狂せるかと存候ほどの次第に御座候。
歌よみに与ふる書 (新字新仮名) / 正岡子規(著)
更に彼の天稟てんぴんの冴えに研ぎ澄まされた名剣手、破門当時からくらべればりんを絶した上達である。
剣難女難 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
何という流名だろう? 何という構えであろう? そして何とりんを絶したわざだろうか。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)