値打ねうち)” の例文
ふん、もの値打ねうちのわからねえやつにゃかなわねえの。おんな身体からだについてるもんで、ねん年中ねんじゅうやすみなしにびてるもなァ、かみつめだけだぜ。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
だから君たちの発見した怪魚はよほど値打ねうちのあるものだ。私たちも準備をしておいたものがあるから、それを持って、池のところへ行ってみよう
三十年後の世界 (新字新仮名) / 海野十三(著)
始めて嫁にやる可愛かわいい長女の未来の夫に関する批判の材料なら、それがどんなに軽かろうと、耳を傾むける値打ねうちは充分あるといった風も見えた。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いや、どうしてどうして、パーウェル・イワーノヴィッチ! 腹蔵なく言わせて頂けば、私はあなたがそなえておいでになる値打ねうちの、せめて何割かを
昔と明治の御世とは、人間の生命いのち値打ねうちがちがいますからね。……だけど、あたしゃあもう、生きるのに草臥くたびれちまった。こんな豚にき使われて
旗岡巡査 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さもないと、すべてが一ぺんのお伽噺とぎばなしのようにえて、さっぱり値打ねうちがないものになりそうでございます。
其頃そのころ諸侯方しよこうがたされ、長兵衛ちやうべゑ此位このくらゐ値打ねうちが有るといふ時は、ぢき代物しろものを見ずに長兵衛ちやうべゑまうしただけにお買上かひあげになつたとふし、此人このひと大人たいじんでございますから
にゆう (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
そうして声を大にして、この仕事の値打ねうちを語り、ますますその美しさを広めたいものと思います。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
まいつゞきにしたつて封書ふうしよおなことで三せんだ。たまに三まいつゞきにすることもあるが、状袋じやうぶくろれたり、切手きつてつたりする面倒めんだうがないだけでも、一せんりん値打ねうちはあるからな。
ハガキ運動 (旧字旧仮名) / 堺利彦(著)
それだけあん子に値打ねうちがあつたのだ。さうでなかつたらいて來いなぞと言はないだらう。
神のない子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
皆よく知つてゐますやうに食器戸棚には何百ポンドといふ値打ねうちのある食器もありますのに。それに御存じのやうに、こんな大きなお邸にしては召使ひたちはく少なうございます。
紐育・上海・東京間を二、三回通信する電報料くらいは使う値打ねうちのある話である。
立春の卵 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
只、それほどまで私にとっては命の糧にも等しいほどな、その苦しみのお値打ねうちにも、それを私にお与え下さっている御当人は少しもお気づきになって入らっしゃいませんようなのですもの。
かげろうの日記 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
その財産の多いすくないによってその人の値打ねうちきまります。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
訓戒の値打ねうちを知る法
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
館山たてやま唐桟とうざんわざがわずかに残っていたり、銚子に大漁着たいりょうぎの染めが見られたりはしますが、取り残された姿ともいえましょう。値打ねうちのあるものでありながら流行に押されてしまいました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
「どうです、老先生、こいつあ、めていただく値打ねうちがあるでございましょう」
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「これは何ですか。これはどんな値打ねうちのあるものですか」
少年探偵長 (新字新仮名) / 海野十三(著)
有難味も真の値打ねうちも……。よろしい、こん夜ここでの楮幣は、明日、わしの佐女牛の屋敷へ持参せい。——わが家の倉にある伽羅きゃら、油、そうの薬、白粉、唐織からおり、珠、釵子かざし、欲しい物と交易こうえきしてやる。
そうしてそれらのものには立派なものが沢山ありましたが、新しい時代では一途いちずに古くさいものと思い込まれました。従ってその値打ねうちが軽く見られ、日本的な多くのものを惜気おしげもなく棄て去りました。
手仕事の日本 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)