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一服
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いつぷく
澄ました
顏で、
長煙管で
一服スツと
吹く
時、
風が
添つて、ざツざツと
言ふ
雨風に
成つた。
家の
内ではない、
戸外である、
暴模樣の
篠つく
大雨。……
持上偖々昨夜より
大熱にて頭痛甚しく夜通し苦しみたり
誠に/\病氣の時の
悲しさは獨身者は藥
一服煎じて呉る人もなく實以て
困り候而て其札の辻よりの御差紙とは
何等の御用筋にやと
空嘯いて申けるにぞ家主は氣の毒さうに
扨々病中と云とんだ
難儀の事なり又聞の
咄しなれば
確とは
といひかけて
笑ひ
消す
詞何としらねどお
施しとはお
情深い
事さぞかし
可哀さうのも
御座いませうと
思ふことあれば
察しも
深し
花子煙草は
嫌ひと
聞しが
傍の
煙管とりあげて
一服あわたゞしく
押やりつそれはもうさま/″\ツイ
二日計前のこと
極貧の
裏屋の
者が
難産に
苦みまして
兄の
手術に
母子とも
安全では
私はバタ/\と
飛びおりた。「ちよつと
來て
見ておくれ、
焦げくさいよ。」
家内が
血相して
駈けあがつた。「
漏電ぢやないか
知ら。」——
一日の
地震以來、たばこ
一服、
火の
氣のない
二階である。