一人子ひとりご)” の例文
ればさはれば高慢かうまんしたたゞらしてヤレ沙翁シヱークスピーヤ造化ざうくわ一人子ひとりごであると胴羅魔声どらまごゑ振染ふりしぼ西鶴さいくわく九皐きうかうとんびトロヽをふとンだつうかし
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
鏡子は弟の様に思つて居る京都の信田しのだと云ふ高等学校の先生が、自分は一人子ひとりごむすめよりも他人の子の方をはるかに遥に可愛く思ふ事
帰つてから (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)
わたし一人子ひとりご同胞きやうだいなしだからおとゝにもいもとにもつたこと一度いちどいとふ、左樣さうかなあ、それでは矢張やつぱりなんでもいのだらう
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
彼の精神は、今はただ一つのパオ(饅頭)の上に集って、さながら十世単伝じっせたんでん一人子ひとりごいだいているようなものであった。
(新字新仮名) / 魯迅(著)
この短歌の意は、私の一人子ひとりごが、遠く唐に行って宿るだろう、その野原に霜が降ったら、天の群鶴よ、翼を以ておおうて守りくれよ、というのである。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
太田豊太郎とよたらうといふ名はいつも一級のはじめにしるされたりしに、一人子ひとりごの我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。
舞姫 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
ソログーブが四つのときにちちんで以来いらいはははよそのいえ女中奉公じょちゅうぼうこうをして一人子ひとりごそだげた。
身体検査 (新字新仮名) / フョードル・ソログープ(著)
自分は日本でも屈指な豪商の身内に一人子ひとりごと生まれながら、からだが弱いのと母が継母であるために、父の慈悲から洋行する事になったが、自分には故国が慕われるばかりでなく
或る女:1(前編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
むかしむかし、まだ森の中には小さな、可愛かわいい森の精達が大勢おおぜいいました頃のこと、ある国に一人の王子がいられました。王様の一人子ひとりごでありましたから、大事に育てられていました。
お月様の唄 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
神がこの世に在りし日の名は玉めがといい、老いたる夫婦の中の一人子ひとりごであった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
どうせうちへ養子をするのだが、甥の竹と云う者が奉公先からさがって来れば宅の養子に成る身の上だが、あれに添わしたいように思うが、お前さん一人子ひとりごだからほかへ呉れる理由わけにもくまいから
政談月の鏡 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
太田豊太郎おおたとよたろうという名はいつも一級のはじめにしるされたりしに、一人子ひとりごの我を力になして世を渡る母の心は慰みけらし。
舞姫 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
かしけれどおまへさまはお一人子ひとりごわたしとてもあにばかりをんな同胞きやうだいもちませねばさびしさはおなじことなにかにつけて心細こゝろぼそ御不足ごふそくかはらねどいもと思召おぼしめしてよとそこにものある詞遣ことばづかひそれは
別れ霜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
またその父や母にいての暖い噂も始終聞かせてくれました。兄弟のない一人子ひとりごと云ふものの羨しさを私の子等と一緒に思ふことが多かつたのです。お金持でなくても一人子ならいとも思ひました。
私の生ひ立ち (新字旧仮名) / 与謝野晶子(著)