高札こうさつ)” の例文
まず、防戦の第一着手に、城下の四門に高札こうさつをかかげ——百姓商人老幼男女、領下のものことごとく避難にかかれ、領主に従って難を
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
『愚僧の申す事が疑わしければ、あの采女柳うねめやなぎの前にある高札こうさつを読まれたがよろしゅうござろう。』と、見下みくだすように答えました。
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
宿場らしい高札こうさつの立つところを中心に、本陣ほんじん問屋といや年寄としより伝馬役てんまやく定歩行役じょうほこうやく水役みずやく七里役しちりやく(飛脚)などより成る百軒ばかりの家々がおもな部分で
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
水にうつる人々の衣服や玩具や提灯の色、それをば諸車止しょしゃどめ高札こうさつ打ったる朽ちた木の橋から欄干らんかんもたれて眺め送る心地の如何いかに絵画的であったろう。
深川の唄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
米友が眼をクルクルして群集を見廻した、そのかおつきと身体からだを見て群集はやはり笑わずにはいられません。高札こうさつよりもこの方がよほど見栄みばえがあると思って
大菩薩峠:10 市中騒動の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
元文げんぶん三年十一月二十三日の事である。大阪おおさかで、船乗り業桂屋太郎兵衛かつらやたろべえというものを、木津川口きづがわぐちで三日間さらした上、斬罪ざんざいに処すると、高札こうさつに書いて立てられた。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
電車の駅近くへ出ると、小料理屋の間にはさまって、大石内蔵之助くらのすけの住んでいたと云う、写真や高札こうさつを立てた家があった。黄昏たそがれちかくて、くたびれきっていたが私は這入はいってみた。
田舎がえり (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「はい、いままわします。ですけれど、じつはこのさきの都田川みやこだがわで、そんな高札こうさつを見ました時に、仲間なかまの者とかけをしたのでございます」
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
少しはほこさきを挫かれたのか、まぶしそうなまたたきを一つすると、『ははあ、そのような高札こうさつが建ちましたか。』
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
さしも客を争う宿引やどひきも、ナゼか竜之助の姿を見てはあまり呼び留めようともしない、これはまだ日脚ひあしの高いせいばかりではあるまい。竜之助は仰いで高札こうさつを見る。
貞享じょうきょう四年に東山天皇ひがしやまてんのうの盛儀があってから、桂屋太郎兵衛の事を書いた高札こうさつの立った元文三年十一月二十三日の直前、同じ月の十九日に五十一年目に、桜町天皇さくらまちてんのうが挙行したもうまで
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
やがて、錆槍をかついだ刑場人夫を先頭に、罪状の高札こうさつをさし上げて来る者や、裸馬の前後に付いてくる警固役人の笠などが見えて来た。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
実はあの発頭人ほっとうにん得業とくごう恵印えいん諢名あだな鼻蔵はなくらが、もう昨夜ゆうべ建てた高札こうさつにひっかかった鳥がありそうだくらいな、はなはだ怪しからん量見で、容子ようすを見ながら、池のほとりを
(新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
高札こうさつの立った日には、午過ひるすぎに母が来て、女房に太郎兵衛の運命のきまったことを話した。しかし女房は、母の恐れたほど驚きもせず、聞いてしまって、またいつもと同じ繰りごとを言って泣いた。
最後の一句 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
寄手の内なら大仏陸奥守さまでもどこの陣地でもかまわねえ。……そしたら高札こうさつどおり、その首はすぐ丹後船井ノ庄一郡とお引き替えだ。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
高札こうさつはいたる所だし、一町五軒の五人組、十人組の町目付まちめつけが出来、万一犯人を知って、届け出ぬ者は、町中同罪のれ廻しでさ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、ひとりの男は、じぶんの“がく”をほこるように、いま兵が辻に建てて行ったばかりの高札こうさつの文を、あたりの顔へこう読んで聞かせていた。
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この高札こうさつに書いてある通り、こんど徳川とくがわさまの手でつかまった、武田伊那丸たけだいなまるとそのほか二人の者がバッサリとやられるのだから
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もう一ぺんさっきの高札こうさつの前へ連れて行ってやる。そして、てめえには読めねえだろうから、読んで聞かせてやろうというんだ。はやく来い」
私本太平記:06 八荒帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武田伊那丸たけだいなまる忍剣にんけん龍太郎りゅうたろうとが、むなしく徳川家とくがわけの手にばくされて、あさっての夕ぐれ、河原かわらの刑場にられるという、あの高札こうさつが事実ならば——
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
正季の問いに、大蔵は旧部下の権三と出会ったことや、高札こうさつの一件などを、里ばなしに交ぜて、おかしく話しだした。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
武蔵の生れた郷里、作州吉野郡讃甘さぬも村大字宮本という村に、有馬喜兵衛なるものが矢来を組み、金箔きんぱく高札こうさつを立てて試合の者を求めたというのである。
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そしてこれからは、租税そぜい地子銭じしせんも軽くする。大いに善政もく。だから市民は安心して、常のとおり家業に励めと、高札こうさつに令しておられるではないか
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんでも、おれたち三人の頭目とうもくの首に、ぜに三千貫の賞を懸けて、諸所の街道に高札こうさつを立て、旅人の夜歩きを禁じたり、土民の自警隊をすすめたりしているそうだから
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
途々みちみち、おかみ高札こうさつが目にとまりませんでしたかえ。近ごろ景陽岡には、ひたいの白い大虎があらわれて、たびたび往来の旅人や土地ところの者さえ食い殺されていますんでね」
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、陣頭高札こうさつを掲げると、たちまち功に燃えた武者どもが、数十名、望んで出た。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この義貞、そんな法規は、ついぞ公文でも見たことはないぞ。——いや道中においては、しばしば、早馬や駅令の高札こうさつなどが、高氏の名でかかげられてあるのを見うけたが、いつ彼がそのような職権を
彼も、好奇にかられて、人々のあいだから高札こうさつを仰いだ。
三国志:02 桃園の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「……でも。その高札こうさつが、私の力になりました」
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、お濠際ほりぎわ高札こうさつにも
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「笑わすな。盗人の高札こうさつとは」
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)