露出ろしゅつ)” の例文
これが今日きょうのおしまいだろう、といながら斉田さいたは青じろい薄明はくめいながれはじめた県道に立ってがけ露出ろしゅつした石英斑岩せきえいはんがんから一かけの標本ひょうほんをとって新聞紙に包んだ。
泉ある家 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
それが情けなく、見すぼらしく、雑木ぞうきがちょぼちょぼとしげっているばかりで、高くもない社殿しゃでんむねが雑木の上に露出ろしゅつしているのだ。自分はまた気がおかしくなった。
落穂 (新字新仮名) / 伊藤左千夫(著)
池は葭簾よしずおおったのもあり、露出ろしゅつしたのもあった。たくましい水音を立てて、崖とは反対の道路の石垣いしがきの下を大溝おおどぶが流れている。これは市中の汚水おすいを集めてにごっている。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
崩れた岩石の間から、半分ばかり無惨むざんな胴体をはみ出している機関車、飛び散っている車輪、根まで露出ろしゅつしている大きな松の樹など、その惨状は筆にも紙にもつくせません。
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
その園生の精のような溌剌はつらつとした美少女の群れが、まる一年、陽の目も見なかった貴重な肢体を、今、惜気もなく露出ろしゅつし、思い思いの大胆な色とデザインの海水着をまとうて、熱砂ねっさの上に
鱗粉 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
そこは密林みつりんのおくであったが、地盤じばんの岩石が露出ろしゅつしているため、一町四ほうほど樹木じゅもくがなく、平地はすずりのような黒石、け目くぼみは、いくすじにもわかれた、水が潺湲せんかんとしてながれていた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
イギリス海岸には、青白い凝灰質ぎょうかいしつ泥岩でいがんが、川に沿ってずいぶん広く露出ろしゅつし、その南のはじに立ちますと、北のはずれにる人は、小指こゆびの先よりもっと小さく見えました。
イギリス海岸 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
ここの太鼓もずいぶん久しい年代をているらしい。びょうの一粒一粒が赤くびているのでもわかる。四方の太柱ふとばしらでさえ風化ふうかして、老人の筋骨のように、あらあらと木目のすじが露出ろしゅつしている。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
煉瓦れんがなどが、ボールほどの大きさにくだかれ、天井裏てんじょううら露出ろしゅつし、火焔かえんに焦げ、地獄のような形相ぎょうそうていしていたが、その他の町では、土嚢どのうの山と防空壕の建札たてふだと高射砲陣地がものものしいだけで
英本土上陸戦の前夜 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今日は三年生は地質ちしつ土性どせいの実習だった。斉藤さいとう先生が先に立って女学校のうら洪積層こうせきそうだい泥岩でいがん露出ろしゅつを見てそれからだんだん土性を調しらべながら小船渡こぶなと北上きたかみきしへ行った。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
又犬の胃液の分泌ぶんぴつや何かの工合ぐあいを見るには犬の胸を切って胃の後部を露出ろしゅつして幽門ゆうもんの所を腸とはなしてゴム管に結ぶそして食物をやる、どうです犬は食べると思いますか食べないと思いますか。
ビジテリアン大祭 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
午后ごご一時に約束やくそくの通り各班かくはん猿ヶ石さるがいし川のきしにあるきれいな安山集塊岩あんざんしゅうかいがん露出ろしゅつのところにあつまった。どこからか小梨こなしもらったとって先生はみんなに分けた。ぼくたちはそこで地図をりなおしたりした。
或る農学生の日誌 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)